「たて糸とよこ糸を部分的に防染して平組織に織り上げて何らかの紋様をあらわしたものを絣という。」と説明されても、実物を見て説明されないと絣の原理は分かりにくいと思います。
制作過程の大事な部分が抜けているからです。

防染とは、何らかの方法で染料によって染まらないようにすることです。
「絞り」の場合は多くは糸で括ります。
絣の場合も糸を使いますが、ご覧の作業では縦糸の一部を3,4センチメートル防染しています。かなり広い範囲で防染しますので、防染する部分を防染効果のある樹脂のテープを巻いて、それを縛っています。

このテープの巻き方も、ずれてこないようにする工夫がされていますし、縛る糸も結び方を工夫して解く作業がたやすいようにしています。次の過程を意識した職人の工夫です。
今写真では糸の束が何本も装置を行ったり来たり巻きつけられていますが、このロープのように見える一本が布幅に必要な縦糸の束なのです。
その縦糸の一部を防染するとその部分が白く残るわけですが、単純に糸をならべれば幅数センチの幅で白い帯状の模様ができるわけです。

ここで縦糸を少しずつずらしてはるとどうなるでしょうか。その白い帯状の模様は斜めになりますね。それを途中でまた少しずつ元の位置に戻せば、「へ」の字になります。
これを細かく繰り返せば・・・・。

図案をされる方はすぐに想像できると思いますが、「矢絣」の模様になるわけです。
白く染め残された部分を残して、他の部分の防染をして染めれば、地の色+何らかの色の矢絣、ができるという訳です。
これを横糸にも施したり、防染の個所を工夫して、何度も異なった色で染めれば、より複雑な絣ができるというわけです。
最初の説明には「糸をずらす」という作業の説明がないのでわかりにくいのですね。
ここでは実演用の道具を持ちこんで作業をしています。この方の工房ではもっと違った台を使って製作しているのだそうです。

防染といってもまったく染料が侵入しないわけではないのですし、糸をずらすといっても工業規格的な精確さではないのですから、微妙なずれやボケが出てきます。そこが味わいになるわけですね。
こうした「絣」も今やインクジェットプリンターで安価に生産されます。
友禅染といっても同様です。そうしたプリントものにはズレやボケがないのです。ただそうしたズレやボケさえも画像で取り込めば印刷できるのですが。
テーマ:ある日の風景や景色 - ジャンル:写真
- 2013/12/24(火) 00:00:48|
- 伝統工芸
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