遺作展の期間は、息子さんに囲まれての一週間です。
ギャラリーを訪れる方々も息子さんを偲んで、さまざまな思い出に触れます。
「本当に惜しい人を若くして失った。」 皆さん、そうおっしゃいます。
社交辞令、義理の上の言葉・・・、としてそういう言葉はよく耳にします。しかし、実際のお人柄は存じ上げませんが、少なくともここに残された作品を見る限り、その技量もお人柄も、文字通り「惜しい人を早くになくして残念だ。」と思いました。そしてお集まりの方々のこうした言葉は、言葉そのままの意味だと感じました。

息子さんの声を聴かせていただいています。
満佐子さんは娘さんの満沙美さんとともにお茶屋(まん)をされるとともに「上ゑ柳」という京料理店を経営されています。
京都のお茶屋さんは「一見さん、お断り」ですし、京料理店も私などの薄給取りで定年退職者には、いささか以上に敷居は高いのですが、この方の人柄に触れて「清水の舞台から飛び降りてみようか。」などと冒険的なことを思ったりもしてしまいます。

趣味が写真だという話になって、実は撮らせてもらいたいと思っていたのですが、といいますと、「どうぞ」とおっしゃって快く許していただけました。

他にもお客さんが幾人もいる時でしたが、遠慮なく周囲を回って撮らせていただきました。
京都人の言葉は表面的に受けとってはいけないということが言われますが、そういうことを恐る恐る斟酌しても、「下手な考え休むに似たり」が私でしょうし、何より、この方の人柄が、私の警戒心を解いてくれました。
お客さんがお一人帰られました。
すると膝を悪くしているのに・・・・今年は「祇園をどり」を諦めたというのに・・・こうして席を立って見送る姿を見て、「プロだなあ」と思いました。

で、・・・お人が悪いなあと思ったのですが(笑)・・・「あの人はプロのカメラマンどっせ。」ということでした。・・・・いえ、いえ、お人が悪いのではなくて、今ここにプロカメラマンがいることを知らせてしまえば、素人の私が気楽には撮れなくなってしまうという私へのお心遣いだったのだと思います。・・・・
何と私はそのプロのカメラマンの前で、事情も知らずにいそいそと写真を撮っていたというわけです。
「冷や汗三斗」ですが、こうして貴重な写真を撮ることができたわけです。

息子さんを亡くして気落ちされて、意気消沈するのではなく、しかもひざの故障も克服して「来年は、なんとか『祇園をどり』出よう思います。」とおっしゃる。舞台に上がり続けるという決意です。
そして舞の先生としての仕事も。

短くない人生ですから、この方にも忸怩たることはいくつもあっただろうと思います。
それでも、いえ、そうだからこそかもしれませんが、こうして凛とした美しさを持っておられる方がこうしておられるということ。そのことが、私のような若輩者を実に叱咤し励ますのです。
まだ、これからおおいに勉強して成長しなさい、・・・と。
テーマ:女性ポートレート - ジャンル:写真
- 2013/09/18(水) 00:01:31|
- 人物
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0