上柳宏彰(宏明)さんの遺作展にうかがいました。
といってもギャラリーの前を通った時に、絵の「赤」に気付かなければ、入っていなかったかもしれません。
明度も彩度も抑制しながら、しかし力の強い赤です。

この方は上柳宏彰(宏明)さんの御母堂。上柳満佐子さんです。
絵を描くとともにドラマーとしても活動されていた息子さんが50才を越えて間もなくに逝去されて、その遺作を展示されています。
私は作者についても、そしてそのお母様についても全く予備知識をもたないままに、ただ歌舞伎役者を描いたその絵の中の赤と力強い黒の線とに惹かれてギャラリーに足を踏み入れました。

この上柳満佐子さんは娘さんの満沙美さんと親子の芸子ということで有名な方だそうです。
祇園東に属するかたで何と藤間流の踊りの指導者です。
そういうことも知らずに、ただいつものように絵に導かれるままにしつこく絵を見ていたのですが、親切に声をかけていただいて、しばらくお話をうかがうことができました。
(⇔)

私はこの方とお話していて、物腰は柔らかで口調は丁寧、穏やかですが、時折見せる凛として背筋の通った姿勢とお話の内容に、「撮りたい」モードに早くから入ってしまいました。
しかし、何分「花街」には縁がないし知識もない、その迫力に気圧されてとても言い出せませんでした。
とにかくその表情の豊かなこと、そして人への気遣い。
芸子さんとして、一人の女性として「世間」をわたってきた、一筋縄ではないしなやかな優しさを感じました。
そして今日、ここでは若くして逝ってしまった自慢の息子さんを偲ぶ母親としての表情。

ふと気付くと、届けられた花には片岡仁左衛門さん、沢田健二さんなどの名前が。入り口の脇には杉良太郎さんからの花が。

たまたま、この方を「お母はん」とする芸子さんが付き添われていて、その方が私の生まれた町の隣の町の生まれだと知り、何かしらとても親近感を覚えました。 満彩代さんという芸子さんです。
満佐子さんのお人柄と、(ほぼ)同郷の芸子さんの同席ということでもなければ、私のお尻の落ち着きはよくなかったでしょう。

息子さんの絵は写真に出ている役者絵のほかに舞妓や芸子を描いたもの、ご自分が加わっていたバンドメンバーを描いたものなどがあり、実に魅力的なものでした。
洋画の手法が強いものですが、赤の色とともに黒の描線の力強さが印象的です。
私が感じたことの一つに舞妓、芸子を描いた作品に流れる感情があります。それぞれ人形を素材にしたものも含めて、舞妓・芸子との距離感がほかの人が描いたものと違うのです。親しみをもち、敬意ももちながら、しかし、ある種の・・・けっして否定的ではない・・・距離を置き、必要以上に美化せずに、持ちあげずに「媚を売らない」絵になっている点に、関心と好感をもちました。
それは息子さんの生い立ちに関係しているようです。
さて、私が満佐子さんを撮りたいと思った要因の一つが、実に「堂々たるお人柄」だということです。
私より一回り以上年配になるのだと思いますが、・・・・膝を悪くして立ち居に不自由があるとはいえ・・・いささかも揺るがない凛とした力と姿勢を感じたからです。
そしてそれが人に対して、覆いかぶさるようなものでは決してないという点です。

<続く>
テーマ:女性ポートレート - ジャンル:写真
- 2013/09/17(火) 00:03:28|
- 人物
-
| トラックバック:0
-
| コメント:2
コメントありがとうございます。
私は最近、モノクロで撮ることが増えました。水墨画と同じような魅力もありますし、フジX20の黒の発色?が案外よかったりするからでもあります。
でも光と影を意識できているかというと・・・、大分疑問ですね。 頑張ります。
- 2013/09/19(木) 19:27:01 |
- URL |
- soujyu2 #-
- [ 編集 ]