私の高校時代の同級生に「スチュワーデス」志望の女生徒がいた。
学校の多くの者が認める「美人」でもあったし、英語も得意であった彼女は、しかし、スチュワーデスには、なれなかった。 視力が規定に達していなかったのか、規定に達していなかったのが身長であったのか、既に私の記憶はあいまいだが。
あの人でも合格しない職業とはいったいどんなものなんだろうと、何か漠然と「すごいもののようだ」と思った。

身をかがめ笑顔を絶やさずに乗客の話を聞き、答える。このまなざしがいい。

温かいものは温かく、冷たいものは冷たく。このことだけでもありがたいサービスだが、裏では容器の取り出しに「やけど」の危険もはらんでいる。

同級生が志望した頃に比べれば、この職業への門戸も広くなってはいるだろう。身長の基準も緩和されているようだ。
「一番は、やる気です!!」とこの方も言っていた。
それでも心身知ともに賢さの無いものには担えない職業だろうと思う。


それにしても、両方の窓際に三列、中央に4列の座席というのは、乗客本位の設計思想ではないと私は思った。利潤計算から出てきたものだろう。
エコノミー症候群が話題になったが、国際線では隣の人が寝入ったら、自分がトイレに行きたい、体をほぐしたい時に、ずいぶん困るだろう。窓際の席、中2列の席の人は、ずいぶん我慢を強いられる。これでは「エコノミー症候群」は話題になっただけで防ぎようがない。
私より大柄な人にとっては一層苦痛なことだろう。

そのことを話題にすると彼女たちも乗客の苦痛を思って辛そうな表情を見せていた。

日航は、厳しい労働組合崩しをしてきた。経営合理化を労働者へのしわ寄せでやってきた。日航の再建を手柄話のように吹聴する人物がいるが、彼が痛みを感じたわけではない。そしてその彼は多くの人生を押しつぶし傷つけてきた。それが手柄だとは。
乗務員や地上勤務員が働くものとしての自覚を高め、経営に対して現場の声≒それは乗客の要求でもあるだろうを反映する為にも労組は欠くことができないと私は思っている。
『沈まぬ太陽』は、私たち乗客にとっても他人事ではないと思う。

報道によれば全日空(ANA)は、客室乗務員の雇用形態を改めることにしたそうだ。これまでは1年契約の契約社員として毎年契約更改をして、3年間「健康状態などに問題がなければ」正規社員として雇用するというやり方だそうだ。・・・こういう会社にだけ有利な雇用のやり方をこれから一層拡大しようというのがアベノミックスでもあるが。・・・・それを14年度から全員を正社員採用とすることとしたといいます。企業が利益をあげるために働くものにしわ寄せをする今の風潮のなかでこれまでの客室乗務員たちの粘り強い要求が実現したことは喜ばしいことだと思う。「格安」競争が招いている働くものの酷使と使い捨て。それを同じ働く者が消費者として「安けりゃいいじゃん。」と働く者の足を引っ張る傾向。自分の身に降りかかればどうなるかを想像しない人々が増えているように思う。自分自身だって今同じ論理で苦しめられているのに。そして自分の身だけを守ろうとして、結局負のスパイラルにとりこまれていく。
これを見て笑っている者は誰か。
ANAの働く人たちが、自分自身と日本の働く人々に大きなプレゼントを勝ち取った。
テーマ:ある日の風景や景色 - ジャンル:写真
- 2013/08/22(木) 00:01:06|
- 未分類
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0