どんな仕事にも、「縁の下の力持ち」が存在する。
建築現場で足場をどんなに巧みに組み立てても、仲間から、安全で動きやすい足場だと評価されても、完成した建築には一切その仕事の痕跡はない。
そういう仕事がある。
この方の仕事もその最たるものだ。仕事の痕跡を残さない、そこにその仕事の見事さがある、そういう仕事だ。

この目がちらつくほど細かな小さな点の連続する模様の反物。
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この模様の中に、模様の点が足りないところがあるのだそうだ。そこを探して点を補う。無論ただの点ではない。雲形定規のような点を細い筆先で書き込んでいくのだ。

別の反物ではやはり白い点が波紋のようにいくつもいくとみ重なる中で、大き過ぎる白い点を探して、補正していく。
「これが少し大きいんですよ。」と言われてぐっと目を凝らして、初めて、う~ン、そう言われてみれば・・という点に色をくわえて行く。
大きな版によって刷り込まれた模様だから、同じようなところが別の場所にもあるはずで、

この方のお仕事は「染色補正」ということなのだそうですが、シミ抜きもされている。
手描き友禅の方が、ちょっとうっかり染料を落としたとい場合にも、またパーティー会場で「赤ワインをこぼしてしまった」合でも、それを何もなかったようにしてしまう。
「ここは直しました。」とう証拠が残るようでは困るのだ。

手描き友禅の作家の描いた線や塗が「ちょっとボケてるなあ」という時にもそれをくっきり引き締める手入れもされる。
いわば業界の黒子だが、その技術に救われている人はずいぶんたくさんいるはずなのだ。
テーマ:ある日の風景や景色 - ジャンル:写真
- 2013/02/23(土) 00:02:12|
- 伝統工芸
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いつも素敵な写真をありがとうございます。
私の父も生前、壬生の実家で手描友禅をしていまして、
ふと父の事を思い出しました。
職人さんの表情って、その方の人生そのものが出ているような感じがして、いいですね。
- 2013/02/23(土) 19:20:55 |
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- かのぼん #-
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その道〇〇年という方は、それぞれの個性を帯びながらも、何か独特の存在感がありますね。
かのぼんさんのお父上も手描き友禅の職人さんだったのですね。
きっといろいろな背中をご覧になってきたのでしょうね。
- 2013/02/23(土) 22:22:22 |
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- soujyu2 #-
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