四月三日の事です。 高瀬川沿いにある「ギャラリー高瀬川四季AIR」を会場として二胡のミニコンサートがありました。
奏者は楠田名保子さん。
高瀬川沿いは桜の名所。

書家・福角窓月さんの個展の一日でもあります。

この奏者とは今までにも何度もお会いしてきましたし撮影をさせていただいてきたのですが、なかなか納得のいく写真にならずに来ました。それをこの人もご存じで、今日も、撮影をさせていただいています。
狭い演奏会場ですから大きなカメラは遠慮してX100Fです。 X20でもいいかなと思ったのですが。
元より、照明は作品のためのものでして「照明の向きをちょっと調整しましょうか?」とオーナーに訊ねた真意を理解していただけず、「このままでいいんじゃない。」とのお返事。 前回は任せてもらったのですが・・・。

この方のファンは次第に増えてきていて、今度メジャーなレーベルからCDが出るそうです。
この会場にも熱心なファンが何人もおられて、私のすぐ右隣りは親衛隊長さんです。
この会場に集まった方々は、オーナーとのお付き合いの関係上、平均年齢が私の実年齢くらいかな・・・と。
会場の窓の外には高瀬川の流れ。そして桜が見事に花開いて、照明に妖しい色を見せています。
感染防止対策もあって時々窓を全開にするんですが、そうするとなお一層クリアに見えて皆からため息が出ます。
ただ、春とはいえさすがに夜ですから、まだ寒い。

二胡の演奏の見事さばかりでなく、この人の人柄を好んで集まる方も大勢います。
今日初めて演奏を聴いたという方々もすっかりファンになったようです。

京都でファンを広げる機縁になった一つがこのギャラリーだということもあって、お住まいが近くはないのに無理をしながら演奏に来てくれています。
そして、私のカメラも少し意識しながら演奏してくれます。

知床半島で海難事故があり多くの犠牲者が出た模様です。 哀悼。
さて、それを報じるニュースの中で遭難者が「北方領土」付近まで流されているのではないかと報じられています。
ロシアのウクライナ侵攻以来、ロシアと「北方領土」の北側で国境を接している日本もロシアの侵攻を受けるのではないかなどと不安をあおる記事も見かけます。
政府もこの際だからと防衛青書でロシアによる「北方領土」の不当占拠を言い立てています。そしてその「北方領土」返還を求めると。
しかし、一体「北方領土」とは何でしょうか。
日本政府は「国後、択捉」「歯舞、色丹」とその周囲の小島をさしてそう呼んでいます。これはあくまで政治的あるいは法律的用語です。
千島列島は大別して大千島と小千島とがあります。ただし日本政府は当然のことながらこの「小千島」という呼称を認めません。何故かと言えば「小千島」とは歯舞、色丹を言うからです。それで大千島=千島列島ということになります。
ところが問題はこの「大千島」は国後と択捉を含むという事です。
1951年に締結されたサンフランシスコ平和条約では
「日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」と、日本政府は自ら(無論、アメリカに強いられているわけですが)千島列島及び樺太についての領有権を放棄しています。
樺太の領有権は日露戦争によって(つまり軍事的に)ロシアからもぎ取ったのだからロシアに返せというのは、なんとか理屈が成り立ちます。しかし、千島については1874年の「千島・樺太交換条約」によって「得撫島以北の千島18島をロシアが日本に譲渡すること」とされました。こうして、それ以前から日本領だった国後・択捉を含めて全千島=大千島が日本領となりました。これは軍事的な威力によって獲得したものではありません。ですから、日本が領有権を放棄しなければならない何らの理由もありません。ですが、(なぜか)日本は自ら進んで千島列島の領有権を放棄したのです。
歯舞・色丹維ついては、千島に含めずに「北海道の一部だ」とする立場があります。日本政府がそれを主張しアメリカもそれを認めています。(アメリカが日本説を支持するについては政治的な理由があります。)
それで政府の見解では、北海道(歯舞・色丹)の領有権は放棄していないのだから、ソ連の占拠は不当だということになります。
しかし、この見解に沿うと、国後、択捉は北海道ではなくて千島ということになりますから、いまさら日本が領有権を主張できないということになってしまいます。
しかし、日本政府は外務省の説明によれば樺太千島交換条約以前から国後・択捉は日本の固有の領土であって、ロシア人もそこには住んではいなかった。だから講和条約で放棄した千島とは、当然ながら「北千島」の事であって「南千島=国後・択捉」ではない。だからその領有権は放棄していないということを言うのです。
しかし、先ほど書いたように千島は「大千島」と「小千島」とに区分され、それ全体が千島列島」だという立場もあり、少なくとも「南千島」+「北千島」=千島列島という認識を「間違いだ」と簡単に崩すことは難しそうです。
それにしても、日本政府は、戦争で奪い取ったのではない占守島までの全千島の領有権を何故に主張しないのでしょうか。そこにも「日本人」の生活があり財産があったのに。
そこを放棄した時にそこに住んでいた人々は土地を、家を失ってきたはずです。そんな人々に対して一緒に「取り返えそう」とは、何故言わないのでしょうか。
少なくとも歴代の自民党政府は北千島の領有権を放棄したのは仕方のないことだと言っているのです。
戦争の国際法的な終了を確定する平和条約(講和条約)の最大眼目は領土問題です。戦後のたがいの領土を確定することが一台眼目です。その領土問題において「千島」の領有権を放棄すると自ら言い出すについては、当然のことながら地図を広げて「ここからここまでね。」と明確な線引きをするはずです。その証拠書類を世界に向けて公表すれば「日本が領有権を放棄すると戦勝各国に約束したなかには、国後・択捉は含まれていなかったと公明正大に主張できるでしょう。
逆に、我々が領有権を放棄した「千島」とは「国後・択捉を含まないものを言っていたのだ」、我々はそう「考えていた」などと言っても通用するはずはありません。水掛け論になるばかりです。
領有権放棄の圧力をかけてきたアメリカと密約に加担した英国に対して「我々があなたがたから領有権放棄をするように強いられたのは『北千島』だけでしたよね。」と世界の前で確認すればいいのです。
何故そうしないのでしょうか。
無論そうしないのには理由がありますし、アメリカも日ロ間の領土問題が解消されるようには動かないでしょう。
外務省のホームページでは千島樺太交換条約の事は、最初のページには書かれていません。今の政府の立場が肯定的に理解されるように話を飛ばして、接合しています。まして、なぜ吉田内閣が非常識で不自然な領有権放棄を行ったかという理由などは全く書かれていません。
加えて、ヤルタ会談で米・ソ・英の間で取り交わされた秘密協定のことなどまるで触れていません。それは日本が当事者としてかかわっていないからなどと逃げることは許されません。こんな秘密協定は不当で無効だと批判をしてもいいはずだし、むしろ、国益と世界の自由と民主主義、戦後の公正な国際関係樹立のためにも、さらに連合国の定めた憲章に照らして、批判・非難し、撤回させなくてはならないものです。憲法については「押し付けられたものだ」から改憲すべきだと70年間も粘り強くしぶとく言っている人々が何故沈黙するのでしょうか。そこに触れなければ「北方領土」問題は真の姿を見せません。
こうして、千島について当時の吉田内閣も今日の政府も唯々諾々として領有権を放棄したままです。
ですから「北方領土」問題は、式が間違っているので「解」はないということになります。
歴代自民党政権は対ロシア領土問題を解決するつもりがないという事でしょう。これでは国後・択捉は勿論のこと、歯舞・色丹さえ取り返すことはできません。
(同じサンフランシスコ講和条約では琉球列島について日本はアメリカに「委任統治」を願うことになっています。第一次大戦後に日本が赤道以北の南洋諸島について国際連盟から「委任統治」を認められたのと同じで、事実上の領有です。第一次大戦終了時の国際的な合意として、ソ連のレーニンなどが提唱した原則として、戦勝国が領土拡張を求めない≒無併合が建前上確認されたからこそのごまかしです。それを同じ原則を確認している第二次大戦後にアメリカは繰り返しているのです。千島列島の領有権放棄はそのことと対になっているのです。つまり日本の北はソ連が取り、南はアメリカが取るという事です。)
(因みにこの秘密協定で「大連商港におけるソ連の優先的利益を擁護し同港を国際化すること。またソ連の海軍基地として、旅順口の租借権を回復すること。東清鉄道及び大連に出口を供与する南満州鉄道はソ中合弁会社の設立によって共同で運営されること。ただしソ連の優先的利益は保障され、また中華民国は満州における完全なる主権を保有するものとする。」としてこの内容をアメリカ大統領が蒋介石総統に承知させると内容もありました。中国=中華民国が曲がりなりにも連合国の一員であり、日本の戦後処理方針を決めたカイロ宣言に招かれている「戦友国」であるのに、その中華民国の蒋介石のいないところでこうした密約を交わしてしまう英米そしてスターリンのソ連というモノの正体を見誤ることはできません。)
という訳で「北方領土」という言い方は一政権・政治勢力の特殊な言い方であって、決して通常、一般のモノではありません。であるのに、マスコミが海難犠牲者の流れていった先を国後・択捉島方向にと言えばいいところを「北方領土」と表現することは不適切であり、政権のお先棒を担いでいるというほかないと思います。
NHKをはじめとするマスコミがここまで退廃しているということを私たちは明確に認識する必要があると思います。
- 2022/04/28(木) 00:00:01|
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