人生を目標に向かって計画的に生きることのできない私です。ですから予定を立てることもできませんし、予定を立てても間違いなく実行することができません。予定に脅迫されることが苦手でもあります。
それで毎年、この時期の芸術系大学の卒業・修了制作展に首尾よく足を運べた試がありません。
今年は京都立芸術大学の最終日にすべり込み、同じ時期の旧京都造形大にはいけませんでした。それでせめてもと思い精華大の卒業・修了制作展に予約をしました。 COVID-19のために予約制をとっているのですが、「予約」するとその時刻に行かねばならないこの制約感が私の足を止めてしまいます。
でもなんとか行きました。
このゲートをくぐった先に展示会場があるという風には思えなくて・・・・学生の遊びかなと・・・一度は見逃してしまいました。

しかしこの先の一段下がったところにある小さな部屋を会場にして展示していた人がいたのです。
この人です。
ヘルメットに彼女がこの4年間追求してきたキャラクターが描かれています。
そしてこの現場感あふれる服装。

彼女の作品を紹介しましょう。

雑然とした個人の作業場のような部屋が彼女が選んだ展示スペースです。

大学の構内、しかも芸術系ですから、あちこち雑然としていて汚れたりもしています。
そういう廊下を歩いていると、ここに多くの学生たちの色々な思いや楽しさ悩みが溢れているのだろうなあと切なくなります。

「君の作品を見て感動したら君の写真を撮りに来るからね。」と伝えて教えられたこの部屋に来ました。
彼女は「私は目立ちたいので写真を撮ってください。」と言いました。 芸術系の学生の中にはこういう意識が明確な人が少なくありません。
第一この服装とヘルメット姿がそれをよく表しています。

毎年こうして卒展に来ると彼ら彼女らの4年間を想像します。そして卒業後に向けていだいている感慨を。
私のあまりに無自覚で不消化だった学生生活と対比するからでしょう。

芸術系の学生がとにもかくにも彼らの4年間というものをこうした有形物に対象化していることが羨ましいのですね、きっと。
私も何篇かの文章を書きましたし、活動上発効した印刷物にも沢山文章を書きました。 それらが私の手元に何もないことで学生生活の記憶も実態も一層、時間のもやがかかってしまっていることは残念なことです。試験の答案にも残しておきたいものがあったのですが。
彼女が演出しとしてまとっている現場感を強調するために大学の重機と一緒に。

次の写真は彼女の作品ではありません。この辺りに生活した学生・教職員「皆」の作品です。
聞くと、一年以上はあそこにあるんじゃないかとのことでした。周囲の学生も「あれなんだろうね。」ということで、こんなものをずっと一年間「皆」が放置できる自由でこだわりがなくて雑然とした場所。こういうことが嫌いな人は勿論たくさんいると思いますが、私は好きで嫌いでたまりません。

彼女だってこの鍋の置かれた場所を通って下の部屋を展示会場として搬入、飾りつけをのために何度もそれをチラ見しながら通っていたわけですからね。
中身は何なんでしょうね。もう変質した元はカレーだというようなモノ?! おたままで残されていますが、これを「なくした人」はその後どうしたんでしょうね、お母さん。

もう卒業の日は近いです。
- 2022/02/27(日) 00:00:07|
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