西陣織会館には西陣織や友禅といった織物や染色などの「和服」に直接かかわった職人さんたちだけでなく、その道具作りをされている筆・刷毛などのほか「杼(ひ)」や扇を作られる方も実演をされている。
扇には涼をとるために送風する扇、舞扇、飾り扇などがある。
「あうぐ」→「あうぎ」→「おうぎ」と変化したとか。

こうしたデザインの扇を壁に飾るのもいいものですよ。季節に応じて梅や椿の絵柄にかえるのもいい趣味ですよ。
それにしてもこの作業台になっている「木」のすごいこと。あの将棋盤の値段が・・なんだからムニャムニャとしょうもない計算が。
それにしてもここからして「一流の職人」の雰囲気。

作業の手順にいささかの淀みもなく実に見事で「話しかけたりしてはご迷惑ですか?」という問いに「話しながらでけんようでは・・・。』ということで指先だけではなくて五感・六感すべてに「仕事」が浸みこんでいるのです。
左手には糊を伸ばして刷毛に取る台があるでしょう?! ちょうど硯のようになっているのです。四角くくぼんだ所に水を注いでその水を少しは毛に湿らせて糊を伸ばすのです。
その刷毛もすぐに手にとれるようにうまく立てていますね。
この作業は扇の骨を紙の隙間に差し込んでいるのですが、ちょうど真ん中にぴたりと収めるために微妙に抜き差しして調整しているのです。

作業の傍ら、これまで熱心に学んで来られた「仏教≒釈迦の教え」についていろいろ話してくれました。
非常に冷静な蘊蓄でした。宗教からも学ぶことがたくさんあると私も考えているのですが、とかく信心の迷信的な面やオカルト的な面また視野狭窄症になりがちなことで毛嫌いされる方も少なくないわけですが、人類の貴重な文化的・思想的な遺産には違いないと、私は思っているのです。

扇についてもいろいろ教えていただきましたが、
着物を着た時に懐に扇をさしまっしゃろ。お客さんをお迎えしてご挨拶するときに自分の膝の前に扇を置きますわなあ。落語家さんの場合などがそのよい例ですわ。高いところからご挨拶をせんならんのですが、この扇を境にそちらとこちらを区別しているんですなあ。結界ですわな。迎える側としてご挨拶いたしますというわけですわ。背描く懐の奥義を指したはっても大事に懐に入れたままのお方がよういます。扇をもっている意味が忘れられているんやないですか。
踊りのおけいこ、お茶の席・・いろいろありますわなぁ。
な~るほど。
私があまりに無知なものでついついいろいろ質問してしまうのですが、この表情でお話していただけるのでちっともひけらかされたという嫌味がないのです。さすがの人徳だと思いました。
職人としての長年の修練がこういうところにも出てくるのでしょうねぇ。
- 2012/03/06(火) 00:35:18|
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