制作の様子や作品を紹介のならば下絵を描いたり方が実を小刀で切り抜いたり、あるいは糊を置いたり洗ったりという過程を撮らせていただかねばなりません。
しかし、そうなると・・・この仕事だけをされているのではなくて渉外や「教室」での指導などなどをされていますので・・・ずっと何日間も張り尽かさせていただかねばなりません。

それだけの工程を経るのですから当然のこととして紅型染めの布で縫った和服や帯は「高価」にならざるをえません。
こうしたことは西陣織や友禅染も同じことです。
私の母親も布だけで数十万円という婦人服の「針子」をしていました。〇〇会社の社長夫人などが名指しで「縫ってほしい」と注文をしきて、実に見事な仕事をしていました。けれどデパートの高級婦人服の店の仕事を受けていたためもあってその「値段」や購入される方たちの生活のレベルとはあまりにも違う「工賃」で、その仕事場と出来上がる服とはあきれるほど不釣り合いでした。

デパートのあり方にも問題があると常々思っていますが、実際にモノを生み出す労働や技術に対する社会的な尊敬があまりにもなさすぎる現状があると思います。
今財政が苦しいからと安易に公務員の賃金を減らす議論がなされていますが、働く人を単なる人「材」として賃金を経費として「安ければ安いほどいい」なんて言う風に考えていると日本の国の労働文化がどんどん衰亡して、国民の心、ことに青少年の心が荒廃していくように思います。
アジア諸国は低賃金だから企業進出に都合がいいなんて言うことを企業経営者だけでなく労働者自身が平気でいっているようでは、日本の未来は暗いと思います。

さて、職人さんの仕事は案外孤独なものです。
業種によっては工房に数人とか十数人とかが一緒に働いている場合もありはしますが、大概は個人営業で一人でとかご夫婦でとかで働いている場合が少なくないように思います。
つい一日話さずに終わってしまうような孤独な作業です。もっとも孤独だということと「寂しい」とか「孤立」しているということと同じことではありません。

多人数の職場の中で孤立しているサラリーマンに比べてずっと観賞者や注文主との「つながり」を感じたり、制作物や描く対象との会話、あるいは自分自身との対話が忙しく楽しいのではないでしょうか。
[大阪市の橋下市長が進めようとしている市役所≒職場改悪が進めば市役所≒職場は地獄でしょうね。
でもそういう中でも嬉々として橋下流におもねっていく人はでてくると思います。ナチズムが広がっていくとき、大政翼賛会ができた時がそうでしたように。]
今描いているのは帯がらの見本です。これを注文してくれた方に見てもらって希望を聞いて手直ししていうのだそうです。楽しい贅沢です。
テーマ:女性ポートレート - ジャンル:写真
- 2012/02/24(金) 00:05:22|
- 染色
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