これまでに何度撮ったことでしょう。
銅心さん。
彼も僕も、もうそんなにいつまでも生きられるわけじゃないし、ここまで人生を過ごしてきたことをほろ苦く思い出しながら、
さあこれから残ろ少ないけれど、どうするかね。
今やれていることを最後まで続けるしかないよね。
そうだね。そうしようかね。
と話す…友達とも言えないけれど・・・まずは「よっ!ご同輩」という間柄の 人です・・・かな。

この日はご婦人がお二人先ほどまで居られて二つ三つのモノを買っていかれました。
口ぶりではどうもとても気に入って、またお仲間を連れて来られるような気配でしたね。
そして私の横には先客として水彩の道具一式をお持ちの絵かきさんです。
何枚かこの辺りの風景を描いたものと、同心さんを書き込んだものを持っておられましたから、もう長いことこの辺におられたのでしょう。

絵描きさんは、銅心さんの売り方にずいぶん感心していて、「買うように説得しないんだよね。勧めないんだね。でもあれじゃ買うよ、結局。」と銅心さんの話しぶりにいたく感心するのでした。

欲しいと言おう人には売るよ。でも「材料の銅の卸価格は○○で、出来具合は◇◇で…じゃあよほどお買い得だから買っておくか。転売してももうかりそうだ。」などと計算している人には売らないよ・・・というのが銅心さんの流儀。
自分の店で扱いたいから月に△△個作ってくれなんて言う注文もあったらしいけれど、それじゃあぜひ欲しいと言って遠くからわざわざ来てくれる人に回らなくなるからと言って断ってきたことも一度ならず・・・。

金属工芸の経験があるから、自分もこの仕事を覚えたいという人が来ても、たいていは音を上げて続かないね。
問題は指だよ。10歳前からやった者でないと指先が割れるからね。
道具を使えば銅線に必ず傷がいく、それじゃあいいものはできないしね。
絵描き氏に 得々と話す。

絵描き氏はその服装を見てもそこそこの暮らしぶりの人らしく見えます。
少なくとも私や銅心さんより、相当裕福でしょう。
「路面店を出すよりコストから言って大分有利だね。」などと経営分析をする。まあそうなんでしょうね。
でもその絵描き氏には同心さんの生い立ちや経歴が分かっていないから、ここに座り続ける銅心さんの覚悟や事情が見えていない。

まあ、斯くいう私だってもう7,8年越しの付き合いだけれど彼のことが分かっているとはいいがたい。
時々ちょっと下ネタを振ってくる銅心さんに対して大笑いでかわして、現代の女性観察の鋭さに触発される。
行きかう高齢富裕女性に対する批評眼も鋭い。
私のように表面をなぞって一知半解で暮らしている盆暗とはちょっと訳が違う。

写真は撮れるときに好きなだけ撮っていけばいいよ、と言う。
この前もちょっと有名ならしいカメラマンが撮っていったけど「わしはそういうのさ。」

彼は少し手を休めた時にタバコを喫うけれど決して灰や吸い殻を地面に残していかない。
何時もほぼ正確に午後4時には引き上げる。時々その後通るときがあるが、決して汚れていたことがない。
前にも書いた通り服装も何時だって清潔でこざっぱりしている。だjから女性に人気があるのだろう。
私のように風采の上がらない風体では決してない。それは一年を通して。

仕事ぶりもそうだが、日々の処し方に筋が通っている。
まあ、大げさに言えば、毎日の生活のレベルに「哲学」があるともいえようか。
こういうところがすがすがしい。
私自身のないものねだりをかなえていて羨ましいともいえる。
COVID-19の感染もうまく逃げおおせて、安倍不況も乗り越えて命あるうちは生きましょうね。銅心さん。
- 2020/03/30(月) 00:00:23|
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