「象嵌」です。「嵌(は)めこんだ象(かたち)」、それが象嵌です。
はめ込むモノが貝殻でも木片でも金や銀でもいいのです。台が木であっても漆地であっても金属であっても、それは構いません。
「京象嵌」は台となる金属(鉄)の板に1ミリメートルの間隔に10本の溝を立てよ気に刻んで、そこに金や銀をたたいて埋め込む手法です。
その溝は他地方に比べて細かい感覚で刻まれているために繊細な表現ができるのが特徴です。
溝は金属の表面全体に施されます。溝は機械で施されます。
山下さんは「京象嵌」ということでここにおられますが、本来はその象眼を施すものを作る「キジヤ」さんです。
ここに見事な作品がありますが、山下さんの自慢は象嵌ではなくて「箱」の出来です。箱といい右の引き出し付きの家具のミニチュアの精度といったら・・・まさに溜息ものです。
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「こういう仕事(箱や家具のミニチュア)ができるンはほかにおらんやろね。」とおっしゃるのですがその言葉には傲慢な自慢はありません。
仕事に対する誇りと、他に同種の仕事のできる職人、後を追う職人のいない寂しさがまといつきます。

薄い金の破片(箔)をピンセットでつまんで・・。

こういう職人さんの表情が見たくて時々ここのお邪魔するのですが、みなさん快く撮影を許してくれます。
「黙っていきなり写真に撮られるのはかなわんなぁ。ワシら実演をしているんやさかい撮られていかんわけやないし、文句も言わんけど、まあエチケット言うもんがあるやろ。」

本来は「生地」作りがお仕事ですが・・。
京都の溝は機械でつけますし、素材の全面に施されます。それ以前は溝は必要な場所に「たがね」で一本一本刻んだのだそうです。実は最初の写真の「箱」の面をみるとその様子が分かります。一部にだけ縦横の溝が施されていますので、そこだけ反射の仕方が違っています。

鏨(たがね)が3本こちら側に並んでいますね。それで溝をつけるのも実演してくれました。等間隔に並行に溝をつけていくのはマジックのようです。

こうしてカフスやペンダントなどを作るのは「余技」なんだそうです。
家具もミニチュアがありましたね。それに本職の象眼師に細工をしてもらうと「ウン百万」かかるんだそうです。
「で、失礼ですけど、山下さんの生地はどれくらいの値がつくんですか?」
「二百万ほどかな。完成品が店に出でれば八百万ほどかな。まあ問屋やデパートがごっつ取りよるさかいね。」
でもこれを手に取らせていただいたのですが、引き出しなどの細工や部材の「組方」を見たら唸るしかない代物で「家『宝』の名にふさわしいですね。」
これ自体には銀蔵が「仮に」施されています。
- 2012/01/27(金) 00:01:21|
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