後継者の無いことに悩む?伝統工芸の世界。
「?」を入れたのは、もう表面上悩んでもいないかもしれないからです。
もう限界点を越えたから「後継者の養成など無理な話だ。」ということが職人さんたちの共通理解だろうからです。
そうです、友禅や西陣の世界はもう完全に滅びの段階に入っています。 行政の無策がその一つの原因です。

そんな中にあって絞りの世界に期待を一身に負う新人が現れました。
この人のお婆様、お母様から話は聞いていました。 絞りの仕事に入ってくれると言っていると。
小学校低学年の頃には、『おばあちゃんの仕事を継ぎたい。』と言っていたそうです。

そのお婆様が3代目ですから、「この人は5代目。
お婆様もお母様も・・・・どうもこの表現はぴったりしないなあ。
お婆さんもお母さんも、この仕事の大先輩ですから、高い高い峰を見ながら成長できるのは何より幸運なことです。

絞りの技術にはいろいろありますが・・・桶絞りや子帽子絞りなど・・・この人のおうちは「本疋田絞り」の匠です。
今絞りの組合ではこの人に期待して、すべての絞りの技術を受け継いでもらおうと総力を挙げてこの人の育成にかかっています。
この人は絞り染めの今日の状況をよ~く知っていますから、それによく答えて勉強に次ぐ勉強をしています。

伝統という名の重い思い使命をずしりとこのかぼそい肩に担いでいます。
それを本当によく自覚しています。
私のことはお婆さん、お母さんから聞かされていたようで、初めてお目にかかったのですが、その日が来たという感じでした。

職業として絞りの世界にはいったのが2年前。 そして今年21才です。
公開実演は今回でデビューという訳です。

座りっぱなしの作業ですし、こうしてずっと首をうなだれての作業ですから肉体的にもきついでしょうし、手指はとても痛いことでしょう。
台もなしに腕を宙に浮かせたままの長時間労働です。
本疋田絞りはとても細かな爪先の作業ですし、細かな作業を単純に繰り返す仕事でもあります。
とても男には務まらない辛抱ができない仕事です。(それで女性が担ってきたというのは、女性に対する差別の結果でもあったのでしょう。) 他の絞りは男性がしても本疋田絞りは女の仕事です。
ここに自分の人生を伝統工芸に重ねようとする凛々しい女性の姿があります。
- 2019/12/10(火) 00:00:46|
- 伝統工芸
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