友禅の手描きをされる瀧さんです。
これまでも何度か撮らせていただいていて、「ご無沙汰しています。お元気ですか。」というあいさつになります。
すでに娘さんも同じ仕事についておられるのですが、瀧さんにという仕事が来るのです。

今日は、直しながらの仕事だからと言われますが、どこを直さねばならないのか私のようなものには分かりません。
今は金色の絵の具で縁を撮っているのですが、赤紫の木のみが俄然浮き出てみずみずしい艶を発揮するのには驚きです。
無論実はにじみやボケを生かして細やかなグラデーションで描かれているのですが、それがまさに輝き始めるのです。
それも派手にならずガチャガチャとして落ち着きのないものになるのではなくて、生命力が出てくるといった感じなのです。

後日若い方のものを見たのですが、それはもう雲泥の違いと言っていいほどに差があります。
やはり一朝一夕で追いつくものではないのだなあと、そして優れたモノがどれほど優れているかは、比べてみると歴然なんだなあと思いました。

使われているのは「面相筆」というものなのですが、これを作られる職人さんも既に本当に数が少ないのです。
「この筆も傷んでしまって…だましだまし使っているけれど・・・。」
いくらかは備蓄もあるそうですが、これからは入手も大変だねとおっしゃっていました。
大原の方にこの面相筆を作っている方がおられますが、事情は厳しいようです。

皆さんお気づきでしょうか。瀧さんが左手に握っているものが何なのか。
この中には絵の具が入っているのですが、「縁で筆を整えたりするのにちょうどいいし、直す時(片付けるという意味)に絵の具が漏れないので重宝している。」とのことでした。
昔はできたものを写真に撮るプロの方がいて、その人からもらったのだけれど、今はそういうことがなくて、困っている。ひょっとしたら持っていないか?と尋ねられたのです。
そうです、フィルムキャップです。

昔はやたらと溜まって始末に困ったものですが、今私はデジタルカメラでしか撮りませんので、果たして部屋のどこかにあるかどうか。
「プロの人に聞けば持っているかもと思って、会えたら訊こうと思っていた。」というのですが、誤解はともかく、何かの役に立てればと思って帰宅すると家探しです。

幸い数個を見つけましたので翌日そのキャップとこの日の写真を届けました。
伝統工芸のすぐれた職人さんたちだから何か相当高価で特殊な道具を使っているのだろうと思ってしまいますが、皆さん日用雑貨や百均の店先に見られるもの、そうしてこんなものをうまく工夫して使っておられるのです。
高いレンズばかり欲しがるのも能の無いことだと思わされれマス。

なんでも既にどこかの会社が製品化したモノをカタログや宣伝の動画などを見て、これさえあればうまく撮れるなどと思い込んで主体的な工夫のないところにいい写真は生まれないのかもしれません。自戒自戒。
- 2019/09/22(日) 00:00:21|
- 工芸
-
| トラックバック:0
-
| コメント:1