西陣織の図案は図案を描く職人の「図案」を問屋が買い取る仕組みです。
印税のように売り上げに伴って支払われる仕組みではありませんから、いくら売れようが売れまいが、それにかかわりがありませんし、またその図案の色を替えたり一部を取り出して組み合わせようが反転させようがお構いなしです。

図案を描く方たちの多くはご自宅に図書館並みに図案を研究収集した本、図鑑がそろっています。
歴史的に過去にさかのぼって図柄は探され参考にされていきます。

ですからこの方たちの知識の集積は膨大です。
季節、吉兆、高貴な図柄などなど・・・・意匠に伴う様々な文化的な知識や習慣を幅広く知っていなければいけません。

そして何より絵が描けなくてはいけないわけです。
もうありとあらゆることが試みられているような世界でなおかつ新奇な、創造的な意匠を生み出すことは並大抵ではないと思います。
ですから過去の作品やほかの職人の作物から剽窃と紛らわしいものを描いて済ますような人もないではないのです。

そこに職人や問屋としての矜持を保てるかどうかということはなかなか難しい問題かもしれません。
が、職人同士にはすぐに分かってしまい、そういうことに「人の口は戸は立てられない。」原則が働きます。
何十年も続けていくのは本当に大変なんだろうなあと思います。

この方は帯の下絵を描かれていますが、そうした下絵の原画を掛け軸に仕立てたりして、作品化されていました。
それにしても手の込んだ下絵です。
下絵の意匠は膨大な量がすでに過去のものから現代のものに至るまでスキャンされてデータベース化しています。それで問屋はこうした下絵職人に仕事を出さないでデータベースから豊富に取り出して、改作して商品化しています。
職人の仕事は減るばかりです。
問屋が目先の利益のために西陣織の根を切っているのです。

それを「生き延びるために仕方がない」と言えてしまうのでは、もうこの世界は終わりです。
- 2019/09/18(水) 00:00:37|
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