昨日までに紹介した、これからの職人に対して、この方はこの道60年を超す大ベテランです。
今制作中のものは振袖なのだそうですが、定番の柄から見れば相当斬新なものになっています。

この、柄の振袖を着てホテルかどこかにいけば相当の注目を集めるに違いありません。
これはご家族とハワイに行った折に着想したものだそうです。
ほとんど何時でも「何か新たな意匠はないか。」と周囲を見ているとのことです。
60年を超えるベテランにしてこの創意と挑戦心が素晴らしいですね。

弟子を抱えている頃は「なかなか自分の思ったような仕事ができなんだ。とにかく弟子のために仕事をとらねばならないし、生活もできるようにささんといけないし・・・。」
だから問屋の注文にこたえる仕事が中心にならざるを得なかったというのです。

それが、弟子を独立させた今となれば「自分の描きたいものを描けるようになった。」というのです。
作品としても、注文としても・・・。

この振袖はもうほぼ完成していて、あとは仕上げの花びらと、そのボカシを施すだけなのだそうです。
この右手には別の意匠の原案が紙に描かれた状態で吊るしてあります。

「新作を仕上げるのにはどれくらいの期日を要するのですか?」
「構想、下書きに一年、実際に描いて1年…だいたい2年かな。」と言います。
その下書きのためには実際を取材して、桜なり松なり藤なりを徹底的にスケッチし、そこから構想を練るのだそうで、幾枚もの写真も撮ります。
伝統的な決まりきった柄を描いている・・というイメージとは大きく違います。
私よりずいぶんと先輩になる方ですが、こうして新作を構想して2年先を見ているのです。この意欲には感服します。
「まあ、あと2年は死ねんということやナ。」と。
- 2019/08/12(月) 00:00:47|
- 工芸
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0