私の目の前に「木村伊兵衛の眼」展のチラシがあります。そのチラシの写真は有名な「秋田おばこ」です。この「おばこ」のモデルは「実は農民ではなく、かと言ってプロのモデルでもなく、秋田在住の普通のお嬢さんだったとのこと」だそうです。その方はとても現代的な美人で、あまり農業にいそしんで、毎日のように土に触れているという感じのかたではありません。
ロベール・ドアノーにはこれまた有名な「パリ市庁舎前のキス」があります。 市庁舎前の雑踏でキスしあっている若い男女は、既に恋人同士だった若い演劇学校の学生カップルを使った演出でした。
だからどうだってことはないのですが・・・。

つい先ほどこの人が腰を下ろしていた石段を立ちあがり、足元に目をやりながらその石段を降りようとした刹那に、「これだ!!」と。この人の中に隠された「美人」の原石が、ここにあるよときらりと光ったのです。
「あっ! 待って。その表情!」
と、行ってももうそれを再現することはできません。
私の、ああでもない、こうだったかなを辛抱強く再現することに付き合ってくれたのですが。
それは単にアングルの具合だけの問題ではなくて、その時の気持ちの表現も含めた表情なので、二度と見ることはできないかもしれません。
でも私はよく言うのです。「まぐれもね、とにかくいそいそな条件がそろえば、そういうことができる潜在力をあなたはもっていることを証明したということだから、大いに自信にして研鑽するのがいい。」と。この美しさの原石をこの人が確実に持っていることを、「私だけが❓知っている。」のです。だって見てしまったんですから。

そんな私のたわごとに付き合ってくれる人は、実に「奇特な人」だと言わねばなりません。

こういう経験をすると・・・別に私だけがそういう経験をしているわけでは、勿論、ないのですが・・・・今度のグループ展では、又美しい人たちを並べてみようかなと思い始めるのです。
きれいな人を連れて来て、そこに立たせてシャッターを切れば、きれいな人の映った写真ができる・・・・というわけにはいかないのだということが、ますますわかってくるので、そうして撮れたよりましな写真を展示したくなるというわけです。
勿論それは「おじさんシリーズ」にだって言えることなんですが。

ちょっと休憩。
この人は、本当はあまり被写体になるのは得意じゃないんです。というかどちらかと言えば苦手なのだろうと思います。

だから、「美味しいもの食べさせてあげるからさあ。」とお願いしなくてはいけないのです。
と、そんなことを言えば怒られるに決まっています。
- 2019/06/06(木) 00:00:10|
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