伝統工芸師で叙勲もされている京仏具の木工彫刻師です。
とはいってもこの方は漆もされるし、生地も作られますからただの木工彫刻師ではありません。
工芸の最高峰は京都にあると見定めて南東北から京都に出てきたと言われる方です。
ずいぶん厳しい修業時代を経てこられたそうですが、地元でも彫の修業をしてきて「地方の彫は京都では通用しない。」と言われたことで一層発奮して向上に努めてきたのだと話されます。

工作の道具も自分で「鋼を探してきてグラインダーで削って自分で作る。」ことが多いのだそうで自宅に鉄鋼の工作機械もお持ちなんだそうです。しかもそれらの中には既に「動かない」からは遺品となったものを買い取ってきて自ら買い取ってきて、部品を取り換え磨いて再生したものもあるのだとか。
「小さいころからとにかくモノを作るのが好きだし、絵が描けたから、やってこられたんだね。」

下絵を描く時点でもう頭の中には三次元の像が浮かび、作業の手順と必要な道具を思い浮かべているのだそうです。
そしてありとあらゆる場面で、植物にしろ人の姿にしろ、観察しスケッチしているのだそうです。
とにかく事実を究明してリアルに把握することが大切だとおっしゃいます。

欄間にしろ仏壇の飾りにしろそこに描かれたレリーフ、透かし彫りの花鳥風月に嘘はないのです。

胸に下げられるようなペンダント場の仏像も作っておられましたが、こういうことをしていたんじゃもうかりはしないね。ただ好きだから作るんだ。
そういってお話しするときの表情はまるで子供が自分の宝ものを自慢するようなはつらつとした輝きがあります。

叙勲されたころは心身ともにとても不調な時だったそうです。それで仕事も長くは続かないかと思ったのだそうですが、叙勲を機会に、こうして認められたのだからと一層励むようになったのだそうで、今はとてもお元気に「好きなものを彫っているよ。」とのことでよいお仕事を選んで制作しておられるようです。

京人形師の方が「仕事が呼んでいる」時に仕事に向かうとおっしゃておられました。(先日の京人形市の御尊父談)
また最近は良い素材を使って高度な技能を発揮して創るような注文が少なくて、こういう仕事の水準を保つのが難しくなっているし、若い職人の成長を補償できないということをそれぞれの言い方でお話していました。
昔の資産家たちは良いものを作らせて収集するような文化力があった・・・・それで日本の文化を高めてきたわけですね・・・けれど今の金持ちはさらに増やすことしかしないし、金をバラまいて優越感に浸って喜んでいるような品の無い低劣な者が多いんじゃないかと危惧します。

低所得者層の文化的内容も貧弱になってきていますが、金持ちの低劣化はそれに輪をかけているのかなと思うことがあります。
- 2019/03/27(水) 00:00:00|
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