仏像を彫るところをじかに見る機会はあまりありません。
わたしは男女一人ずつの仏師を知っているだけでした。

この方は大ベテランの仏師さんです。
一木造や寄木造などの仕組みや特徴を懇切に教えていただきました。

鎌倉期の仏像づくりに見られる水晶などで入れる「玉眼」についても仕組みや作り方も教えていただきました。
頭部の前面が切り離されるようにできていて、中は空洞。くりぬかれた目の内側に湾曲するように削られた水晶(今ではガラスも使われる)の板を当て、それに墨などで裏から直接に瞳や目尻、あるいは毛細血管を描いたうえ、動かぬように真綿あるいは紙などを押し当てるとともにその色をで白眼を表現するのです。
なかなかの迫力ですが、瞳を墨で入れるときにはとても緊張するそうです。
「これで表情が決まりますからね。」
画竜点睛の言葉もありますしね。

ここでは公開で実演していますので、「撮らせていただいても良いですか。」とのお願いには大方の職人さんが快く応じてくれます。
でも、やはり、仏像や木彫に興味をもっていろいろお話を伺える準備があったほうが良いと思います。
そうすると、ただ珍しいからとか、旅の記念にという様な事で撮影を許していただくのとは違った空気を出して実演をしていただけるような気がします。

私はこれまで幾度となくこうした公開実演の場で職人さんを撮ってきました。
公開なんだから「撮るのは簡単だろう?」とおっしゃるかもしれません。確かにそうなんですが、そうとばかりは言えないということに気付きます。
お客様サービスで「撮らせてあげている。」という場合と、職人としての矜持・技を撮ってもらいたいと思っていただける場合とがあるからです。

職人さんも「本気で撮ってほしい。」という思いをお持ちなのです。
私が記念の2,3枚を撮るのではなくて、四方から観察して幾枚も挑戦するのを察知すると醸す空気がぐっと変わってくることがあります。

そういう時にいい写真が撮れることがあります。
有難いことです。
- 2019/02/23(土) 00:00:48|
- 伝統工芸
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