安倍晋三自民党内閣の最大の目標は「改憲」です。
この改憲については様々な意見があります。
私も現憲法を丸ごと是とするものではありません。ただ現状況下での改憲には道理もなく、その改憲の狙いは大半の国民にとってはひとかけらの利益ももたらさないと思っています。
一般論としては憲法を「不磨の大典」とする必要もなく、常に必要な議論・検証をしたらよいと考えています。
しかし、残念なことに、現今、改憲が話題になっているからと言って憲法意識や知識が国民の間で深まっているかということになるとそれは大いに疑問です。
改憲に賛成される方たちから、教育現場で偏った憲法教育が行われているという発言をよく目にし、耳にします。それで少なくない人がただ見識もなく洞察もなしに、教師の言葉をうのみにし、思い込み(刷り込み)によって「分かりもしないで護憲を唱えている」という批判をする方があります。
私はそうは思いません。教育現場では言われるほど熱心な憲法教育・学習が行われているかどうか、憲法制定理念を歴史的にまた憲法論的にきちんと深めて複眼的に教えているかというとかなり疑問です。ですから若者の中に憲法の歴史的な水準や憲法の理念が定着しているかというといささか以上に疑問なのです。それは現場の先生たちの憲法学習自体の衰弱としても現れていると思います。学校の中では政治的主張をしたり討論する環境がどんどん狭められ教員の自由な思想も創造的な教育実践も極めて狭く制約されています。
また、一般紙企業においても職場の中では「政治」はタブーになっているところが圧倒的に多いでしょう。
マスコミに対する政権与党の圧力とマスコミからの「忖度」、NHKの退廃など目に余るものがあります。憲法を広く国民的に、大いに異論をぶつけて議論するような環境は壊されています。
これでは改憲の検討など到底無理です。
しかし、改憲派の人たちはむしろこうした状況を歓迎、さらに強化して、その中で改憲を実現しようとしているように見えます。
そこに現在の改憲派の人たちの底意、未来社会像が透けて見えます。
(それでも改憲派の人たちは自らの都合の良い状況になっていないことを教育の責任にしているのです。それで焦れて教育の内容に盛んにくちばしをさしはさみ教科書選定に政治的圧力をかけるなどして干渉してきました。それが端的に表れ、教育現場を改憲派で乗っ取ろうとしてその見にくい姿を露呈したのが森友学園問題でした。)
改憲論議をするならするのでいいんです。ただその中で様々な異論や疑問があるはずですからそれらがよく討論され意見交換し、認識が深まるとともに同じ憲法のもとで生活する主権者同士としての連帯や共感性が深まることが望ましいと思います。が、それがそうなってきているとは私の目にはとても見えません。
憲法論議を通じて「国民性」がステップアプしていくことが望ましいと思います。それは排他的なナショナリズムのあおりとはまた別の事です。
さて、そういう意味からいうとこの「対談」企画は、優れて今日的だと思います。
「ビッグ対談 『自衛隊と9条』を語る」 対談者は元陸相の渡邊隆氏と思想家(チラシの紹介通り・・蒼樹)内田樹氏

内田氏については、手の届くところにも『街場の中国論』『街場の憂国論』があり、ほんの少しはお考えに触れているのですが、渡邊氏については全く存じ上げません。

ここでお二人がこの日どんなお話をされたのかをご紹介する気はないのです。
私が聞きたかった論点や深めていただきたかったことについては触れられずに終わり、私としてはいささか不満が残りました。
が、 幾つかの点で違和感を抱き、納得できないお話も聞かせていただきましたから、その点では聞きに行って良かったと思いました。
私は会場に入る前に写真撮影に関しての制約について会場スタッフの方に確認していましたので、最前列で話を聞きながら撮影をさせていただきました。
そして会が終わってお二人がご自身の著作のサインセールをしていましたので、その手の空く隙きに公開のお許しをいただきました。

私は高校生の時に友人と連れ立って浜松の航空自衛隊基地の近くで若い自衛官たちにマイクを向けてインタビューをしたことがありました。
いろいろな地方語の訛りを持つ私たちとそう年の違わない若い自衛官たちは照れながらも率直にインタビューに答えてくれました。

自衛隊は憲法違反の存在だと言われ、保守的な静岡県西部地方であっても制服で外出するのは気が引けるという時代でした。
渡邊氏も防衛大学校入学の年に長沼第一次判決で自衛隊は憲法違反だという判決がだされ、悩みながら自衛官人生を送られたそうです。
「軍隊」の中に「軍」の存在や役割について葛藤があるということは極めて大切なことだとわたしはおもいます。(それはどのような組織にも言えることだと思いますが。)

ただ自衛官幹部の中に田母神氏のような人物もいたし、私の個人的な体験としても、若い尉官から「そのうちにおまえたちのような奴(護憲派?)は皆放り込んでやる!」と面と向かって言われたこともあります。PKOに出た先で「軍事的衝突が起こってしまえば政府も国論もついてくる。」と戦前の関東軍の将校のような考え方をもって活動し、その後国会議員となっている人もいます。
ですから、憲法にしろ、自衛隊にしろ、具体的にリアルに見ていく必要があると私は思っているのです。
今日書いている文章は「渡邊氏も防衛大学校入学の年に長沼第一次判決で自衛隊は憲法違反だという判決がだされ、悩みながら自衛官人生を送られたそうです。」以外については渡邊氏や内田氏がこの対談の中で話されたことの引用ではありません。あくまで私の考えですので誤解無きようにお願いします。
- 2019/02/17(日) 00:00:35|
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こんばんは。
貴重な記事をありがとうございます。
憲法改正、改悪?に関しては、「議論を深める」どころか、軍事案件のみ先行のようで非常に気掛かりです。
伊勢崎賢治氏が再三説明されておられるように、いまだに敵国条項から外されていない日本が、正式に「軍隊」を持てば、手ぐすね引いて待っている「仮想敵国」が実際の「敵国」に豹変する可能性も大きくなります。
普通の人々に情報が行き渡らず、正確な情報を流す報道機関も少ない昨今、とても改憲論議などをする環境に日本はありません。特に現政権の偏向は甚だしく外交にせよ、内政にせよ、不安材料ばかり。
真に議論を深めることは、現政権下では無理です。このまま国民投票などされたら、イギリスのブレグズィットの二の舞になりかねません。。。
- 2019/02/17(日) 20:52:37 |
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- yokoblueplanet #-
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yokoblueplanet さん、コメントありがとうございます。
あなたの指摘はその通りだと私も思います。そして、国民の側が急いで自覚的に憲法について知見を深め、自主的に討論をしないと、「国民には眠っていてくれた方がいい。」「気が付かないうちに進めよう。」という改憲派の戦術にまんまと嵌ってしまうと思います。60年安保の時にも70年安保の時にも壮大な憲法学習運動がありましたね、
- 2019/02/18(月) 09:35:20 |
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- soujyu2 #-
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