「〇年ほど前に撮ってもらった(撮らせていただいた)ことがありましたよね?!」という方にときどきお会いするようになりました。
この方も4年ほど前に撮らせていただいて「そのカードもっていますよ。あの時はブログにあげていただいてありがとうございます。」なんて言われてしまいました。

私も一目見た時には「オッ! 以前お会いしたことがある人だ、・・と思うけど、・・・そうかな?!・・多分、いや違うかな?」
どうも私の記憶力には絶望しかないです。
一応その言い訳には「1400人ほどの方に撮らせていただいてきたので記憶が混濁してしまって…思い出せなくてごめんなさい。」なんですが、そうでなくともそもそも記憶できない、記憶を引き出せないこの脳みその体たらく!!
この記憶力の無さで「君は研究者になれないよ!」と言われたこともありました。ご正解でした。

この方は西陣織の下絵を描かれています。
絵の具を盛り上げて厚塗りをしているので「どうしてですか?」とお訊ねすると
「この下絵を見て出来上がりを想像してもらいやすくしているんです。」とのことでした。

織物は平板な絵とは違います。
刺繍があったり金糸銀糸が織り込まれていたりと様々な凹凸があります。
それを予想して、こうなりますよという絵を描かれるのです。というか、むしろここはこういう織り方で表現するのだと提案しているのですね。

西陣や友禅の世界にもコンピューターやプリンターが導入されていて、ある種どんどん現代化しているのです。
それはおおむねコストカットの手段として導入されているのですが、いわば現代かですね。

ところが別の面では昔ながらの仕組み・習慣が残っています。
こうした下絵職人が描いた「原画」は問屋の買いきりになります。
それでこの原画の色を変えようが、一部を切り取ろうが、パターンをひっくり返そうが、この原画から何枚の反物や帯ができようが、それらは職人の工賃には全く反映されません。
つまりは「職人の著作権」なんてものはないのです。そして反物にはその職人の名前も、当然❓書かれません。極めて特殊な、例えば人間国宝などが描いていれば別ですが。

こういう労働環境では、若い人は入りにくいでしょうし、育ちにくいなあと思います。
- 2019/02/07(木) 00:00:08|
- 伝統工芸
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