「かけつぎ」という言葉を辞書で引くと「『かけはぎ』に同じ」として、「布の繕い方の一つ。双方の布を目立たぬように継ぎ合わせる方法」と出てくる(広辞苑)
けれどここでいう「かけつぎ」は「繕い方の一つ」ではありません。

織物の完成品を点検すると、行程の中で糸が切れていたり、禁止が裏返っていたりするのを見つけることがあるだそうです。
高級な織物は「正絹」であるわけですが生糸が生物の吐く糸である限りは工業製品のような一律の品質を持つことは不可能です。その沢山の糸に同じように負荷をかければ耐え切れずに切れるものもあります。

また金彩の際には緊迫に和紙を裏打ちしたモノをごく細く切ったものを糸として織り込みます。
これが途中で裏返れば金の輝きは失われますからこれをより戻してやらねばなりません。
これをこうした拡大鏡を使って針先を駆使して直したり、また切れた糸の端を目立たぬように始末したり、他から・・・・同じ生地の別の場所・・・同じ色の糸を持ってきて補うのです。
実に根気のいる地味な仕事です。

無論幾度も着た結界とがほつれたりしたものも直します。
仕事の結果が見えないことが褒められる仕事です。

ご自身は以前は機を織っていたのだそうで、だからこそ織物の仕組みを熟知しているからこそできる仕事なんだそうです。
それはそうですよね、車の修理工も、車の仕組みを熟知しそれぞれの働きを理解しなくてはできません。

「一日中そうして拡大鏡をのぞき込んで仕事をするのも大変でしょうね。」と声をおかけすると、沢山の人と一緒にいろいろ変化する仕事をするよりこうして一人でじっくりと取り組む仕事が性にあっているのかな。」とおっしゃっていました。
「ただ目は確実に悪くなるわ。」とも。
高度な仕事の仕上げに、スプーンをお使いになっているのを見ると何か不思議な感じです。
「これがちょうどいいのよ。」
- 2019/01/30(水) 00:00:36|
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