防染を施したところに色をさしておられる。
「伝統工芸士」のお一人です。 全国にざっくりと4500人程がおられ、そのうちの10数%が女性です。
伝統工芸と認められた業種自体が京都に多いので当然の成り行きとして総数の四分の一ほどの方が京都におられます。

私がいろいろの分野の沢山の職人さんに写真を撮らせていただいてきたことをお話して、「さすがに京都ですから伝統工芸士の方も数多く撮らせてもらいました。皆さん、とても謙虚な方が多くて、いろいろ教えていただきました。」
中国でたまたま見かけた他府県の伝統工芸士さんがあまりに尊大だったので、京都の方々は、皆さん「偉そうな態度をおとりになる方が少ないですね。 周囲に伝統工芸士がたくさんいるし、伝統工芸士の資格をとられない方にも非常に高い技能の方がおられて、謙虚になられるんでしょうか。」などとお話をしました。

そんなやり取りをしていると「私も伝統工芸士なんですよ。」と。
「いやあ、これは失礼しました。」 うかつにもほどがありますね。 伝統工芸士とちゃんとパネルにありました。
私はいつも肩書を見ないで、会釈をしては、作業を見学させていただき、やがてお話を聞かせていただくというふうにすぐにそのかたと直に接してしまうので、こういう見落としが多いのです。

東京は勿論のこと新潟や福井、石川などなどにも多くの伝統工芸士の方がおられます。
でもやはり京都は突出していますから、幸運なことに私もこうして伝統工芸士さんの技を身近に見せていただけます。

「差指刷毛」は細かいところまで丁寧に染料をさすことができますし、またボカシやグラデーションを付けるにも有効です。
刷毛の先が斜めにカットされているからです。

防染されているその際の限界まで、また防染の線が交差している頂点のところまで毛ほどのピンポイントの隙間も差し残しを見逃さない神経の使いようです。
もし毛筋一本分より小さな差し残しがあったとして、消費者も問屋もそれに気づかないとしても、この仕事をしている自分には分かるし、又同業者の目も、職人の矜持として気にして見逃さないようにしているとのことでした。

一体何を見ておられるのですか?という私の疑問に答えていただいたのです。
妥協を許さない職人の仕事ですね。
- 2018/10/27(土) 00:00:07|
- 伝統工芸
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