新婦はこの後、綿帽子を被るのですが後の会食の時の洋装にも合うような髪にしています。
「君は和服に会う顔立ちなんだから、化粧をされ過ぎてはダメだよ。」と以前話したことがありました。
この日初めて顔を見合わせた時の最初の一言が「どうですか?」というものだったのは、そういう背景があったからです。

私がどういうタイミングで、どういう振りの時に撮りたがるか、この人がどう撮られたがっているか、をお互いに知っていますから、その点気楽ですし、目線や顔の向け方などはこちらとのアイコンタクトや指先の指示で通じます。
そういう意味でこの日初めて撮られるという人や初めてのカメラマンとのやり取りとは全く違っているはずです。

第一カメラ慣れしているのですから、この人は心理的に楽でしょう。
でも、「素人」ですし、私の撮影はいつも特別なポーズや設定ではなくて日常に少し味付けした程度の撮影できていますから、「スレ」てはきていません。

こんな風に接近しても、緊張を強いることはないので安心です。
「ちょっと我慢してね。」と言ったからと言って息をつめてしまって顔を赤くするような様な事もありません。
肩に力が入っていないことがよくお分かりだと思います。
敢えて言えば「欠点・弱点」も、もう十分に知っていますから、今更「写りをよくしたいのであれこれ考えてしまう。」という事もありません。私がそういう点を撮ってしまうことがないことは分かっていますし、知られて困ることもないでしょう。
多分、一番の安心は私がこの人の持つ美点を評価して、何度も何度も話しているという前提があることでしょう。
それがあるのでこの人に声をかけ撮り続けてきたのですから。
他の人はともかく私がその点を高く評価しているということをこの人は十二分に了解しています。

人物の撮影で、そういうことがとても大切だということを私は撮影の毎に強く感じます。
よく写真入門のような本に、「ポートレート撮影の時は、相手を褒める言葉で緊張を解し、モデルの気分をたかめましょう。」などと書いているものがあります。
でもその言葉が「いいよ、きれいだよ。」などという決まり文句であったり、その場限りのおべんちゃらでは相手の表情は本当には良くなりませんし、良い関係を作ることはできません。

人物撮影の時に必要なことは相手の美質をきちんと見付て、素直な気持ちで評価できる力があるかないかという事です。
相手に対するリスペクトや美質の評価ができないのに、ただ綺麗な人だから、かっこいいから、とにかく女の子を撮りたいから、ポートレートを経験したいから、などという事では、いい写真は撮れないと思います。
入門書にはそういうことをきちんと書いてほしいものです。
- 2018/10/05(金) 00:00:22|
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