上田バロンさんと並んで話しているのはクワイアキラさん。
他と一風違って立体造形で出展している。しかも彼の作品には社会的なメッセージが込められている。

クワイさんに作品の横に立ってもらった。
黄金のドラゴン!! この黄金に伏線がある。彼はただ金を素材として使うというのではなくてそこにはっきりと意味を持たせている。というより金が帯びている意味合いを明確に意識して作品をつくっている。
このドラゴンは・・すでにお気づきのように・・・日本列島なのだ。日本(列島)を金で表現した意味は重層的だ。
足元に散らばる白いものは「硬貨」の形をしている。それは確かにイメージは貨幣なのだが、その貨幣に刻銘されているのは「吾唯足知」なのだ。富、欲望の象徴的な存在である貨幣に刻まれた文字が「吾唯足るを知る」というのは何という逆説、皮肉。
(⇔)

ここには明確に現代日本社会に対する批判があると思います。
殊に今度の震災や原発事故を経験して日本のあり方を考えざるを得なかったといいます。

私は・・・私自身の写真を含めて・・さまざまなギャラリーで見る(芸術)作品(たとえば院展、創造展や二科展なども含めて)が、今日のわれわれがつきつけられている課題といかにかけ離れているかを感じるのです。
二科展には数点、今日の日本社会が直面している課題を意識した作品がありましたが、そのほかの多数の出品作の大半がそれと分かる課題性・問題意識性を示していませんでした。[無論私に力がなくて見てとることができなかったということは大いにありうるのですが。]

赤い線は血管をイメージしているのだそうです。
龍は単に地図上での形になぞらえて上を向いて登っているのではないのです。日本にはこれからも成長発展していってほしいという彼の期待が示されているのです。そういう肯定的な意味合いをもって「金」色なのです。しかし、その上昇は赤い血管でつながっている「吾唯足るを知る」と刻まれた、黄金ではない白い清らかな貨幣につながっているのです。つまり富・豊かさについての意識変革を彼は我々見る者に迫っているのです。

その人間像でしょうか。
これまでたくさん見てきた若手の作家に希薄だなと感じていた要素を彼は表現してくれていました。
私は彼の赤い靴、シャツの赤いストライプを見て「赤い血管」に符合するのかなと、勝手な想像をしてみました。
- 2011/12/03(土) 00:05:24|
- 人物
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0