「教科書に書くなら二・三行のことだけどね。」
つまり「幅一ミリで深さ1センチにのこぎりを引き、底部を0.5ミリ残す。」ということが実際にできる技は簡単なことじゃないというです。
幅一ミリの溝の入り口が正確に平行な切り口で底部に届き、かつその底部に傾きはないか。切れ味は鋭く平滑な面を作っているか。
高い精度で連続して溝を鋸で引けるか・・・・。

そういうことが職人の技には必要で、仕事の指示は「幅一ミリで深さ1センチにのこぎりを引き、底部を0.5ミリ残す。」とあるだけのことが、実は容易にはできないところに、面白みがある。

工作機械は「そういう数値を入力してやれば、その通りに工作するだろうけど、木の性質や工作時の条件、それを結局何に使うかを勘案して、微妙に仕上げることは、やはり機械にはできない。」
そういう事でもあるそうです。

木材の状態を目で見て指で触れて、鋸の目に対してどう反応してくるか、折り曲げに対する耐力はどうかなど一瞬にして判断することは機械にはできない。
まして次の仕事をする人に対して、漆を塗るにはどういう仕事をしておいたらやりやすいか。
一体として作っておいたほうが良いのか、部分部分を組むように仕上げておいた方がいいのか・・・。

今ここでする仕事だけを考えているのではない、ずっとこの後の仕事をイメージして、仕事のやりやすさや完成した時の仕上がりを考慮して仕事をする職人の技。

そういうものが積み重なって「いい仕事」は完成する。
職人の仕事は縁の下にある場合が多い。
- 2018/02/26(月) 00:00:29|
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