仏壇・仏具の展示即売会があり、そこで公開実演もされていた。
西陣や友禅、清水焼などは比較的職人さんに触れる機会がありますが、その他の仏具や神社の用具の職人さんはなかなかお目にかかることができません。

この方は木彫をされています。
彫刻刀の切れ味が素晴らしくて、木を削っている感じがしません。何か柔らかいものをスッスッと削り落としている感じです。

公開実演の場ですから最高度に集中しなくては彫れないようなものを彫っているわけではなくて、敢えて言えば話しかけられても大丈夫なものを準備して実演をされています。
実際、質問に答えながら彫る姿もあります。 作業を中途で置いて説明しやすいものに持ち替えて実演されることもあります。

この方に撮影を許可をとるときに少し逡巡されていました。それはこの会場の写真撮影の制約について確かなことが分からなかったからです。と同時に後でわかったことですが「ここでの作業は本当の自分(仕事)を見てもらうようなものではない。いつもの工房で、その環境で、それなりの技を込められる仕事の時ならともかく、この姿を撮って『職人を撮った』と思われるのも抵抗があるなあ。」というお気持ちを抱いていたからでもあります。

観光などの方が「ちょと二、三枚撮っていいですか?」というのなら、それほど迷いもなかったと思いますが、私が予想外にアングルを変え、距離を変え、あれこれカメラもいじりながら何枚も何枚も撮るので、この方の集中度もどんどん増していきました。
その折に「これはいつもと違うし・・・。」ということをおっしゃったのです。
全くその通りで、私はいつも心の片隅で、職人さんは不本意な気持ちを抱かれているだろうなあ、と思ってきたのです。

それでもほとんどの職人さんは、初めこそ笑顔があってもやがてしっかりと集中し緊張度を高めて作業をしてくれます。
そこに職人の誇り、矜持というものを感じることがしばしばです。 それで、私の方も、簡単にこれでいいということにならなくて、たくさんの枚数を撮ることになってしまいます。
撮りながら、観察し、見つけていく、そういうことになります。
- 2018/02/13(火) 00:00:38|
- 伝統工芸
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