寺町のギャラリーの一つに「ギャリエヤマシタ」があります。最近改装されてきれいになりました。
そこで山本みつるという方が個展を開いておられました。以前にも見させていただいたことがあり、早速ギャラリーに入りました。
どことなく見たことがあるようなという感じをお持ちになったのでしょうか、「ハガキを見てこられたのですか?」と聞いてくれましたが、通りがかりでした。

この方は求められて水彩画の教室も開いておられますが、なんといっても童画に魅力があります。
私は最近の子供向けの本の挿絵や絵本の絵を見てつくずく悲しい気持ちになるのです。なんて粗末な絵で子供たちが育てられているのだろうと。
へたくそなコミックキャラクターの塗り絵のようなものが氾濫しています。
この方の絵はそういう流れから言うと取り残されたような作品だと言えるかもしれません。
ですが、子供の観察がいかに丁寧で優れているかは絵を見れば明らかです。

1950年、60年代に日本のどこにでもありふれて存在した子供の世界がそこにはあります。
作者の山本さんが、自身子供時代を楽しみ、今いつくしんでいる心が絵の世界にあふれています。

単なる郷愁を記憶に頼って描いているのではなくて、この時代の資料を集めディテールの正確さとして反映しているために、リアルさを欠いていないのです。
童画の背景には水彩に見せている画力の裏付けがあります。ごまかしがありません。

ファンも多いようでお客さんが見えました。

50年代60年代の子供の世界を「保存・記録」の意味も込めて描き続ける山本さんには、今私たち大人が子供たちに与えている状況に対する静かで、しかし強い批判があります。
七福神や神話を題材にしたいくらかコミカルな世界も描かれますが、今回出品されていた「スサノオ」の絵は、魅力的です。
「ギャー」とか「ズガーン」などの叫び声や擬音を書きこんで、大きな口を開けさせなければ迫力を出せない人たちの絵とははっきり一線を画します。
若い絵描きたちにイラストを選ぶ人たちが多いですが、好き嫌いを越えて山本さんの絵から学んでほしいと思いました。
- 2011/11/12(土) 00:03:02|
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