雪をかぶる椿です。
「線描き」なしですね。

ここでいう線描きとは絵柄のふちを糊を置いて「ふせる(染料が沁みださないように止める≒防染)」ことをしないという意味です。
糊を置けばその枠の中を「塗る」ということになります。

絹布にそのまま日本画を描いているような感じです。
背景などは水を刷毛でふくませて、そこに筆で描いていきます。それをお好みを焼くときに鉄板に油を引くのに使うタンポン様の刷毛で染料をなじませてぼかしを入れます。
照明の色かぶりがひどいのですが、無理やりカラーです。

雪は胡粉を混ぜた白で描きます。
生地の色を抜いて「白」にすると平板な白になってしまいますが、胡粉を溶いたものだと厚みが出て陰影とボリューム感のある白になります。
それで雪のつもった感じがリアルに描かれます。

織り柄のある生地は描きにくいと思うのですが、ぐんぐん描いていきます。
椿の葉の重なりや陰影がどんどん出て来ます。

昔は親方や父親の仕事を傍らでみて、その技術を「盗んだ」のだそうです。
弟子や子に「教える」ということはまずなかったのだそうです。
それで工夫することを覚えたし、技術が身につき、成長する喜びがあった。そして独自の工夫も生み出すことができた。
誰にもできない工夫を考案すると、それで相当な期間独占的に仕事を得ることができたんだそうです。

種明かしをすれば「なんだそういう事か。」というコロンブスの卵みたいな工夫も多いのだそうですが、しかし、それを思いつき一つの技術・技能に仕上げるためには、常に研究心をもって仕事をする気持ちがなければだめだとおっしゃいます。
「日本画の絵画展などに勉強に行かれることも多いんですか?」とお尋ねすると意外な答えが返ってきました。
「まあたまには行くにはいくけれどあまり良い絵は見ない。あんまり感心するとその絵が印象に残ってついつい引き寄せられてしまって自分の絵にならない。だから先生について絵を学んだり、立派な作品に心酔しないほうがいいね。」

同様のことを画家の斎藤さんも言っていました。
考えさせられます。
- 2017/10/17(火) 00:00:01|
- 伝統工芸
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