40年も仕事をしている職人さんの技はとても易々としたものに見えます。
こんな私でも旧職の時に、若い方に「よく易々とそういうことができるものですね。」と言われたことも・・・たま~に・・・はありました。
「はばかりながら伊達に30年この仕事してるんじゃないよ。」という訳です。
柳家小三治の「枕」なんてものは、なんだか思い付きでダラダラとしゃべって・・とご本人は言いますが、とてもそんな風には言えないものでして、それこそまさに名人の境地です。(実際、彼はその間にお客さんの様子を観察し空気を感じ取って今日の出し物を決めるのだそうですし、お客さんの気持ちの構えを誘導しているという面もあるのでしょう。)
言葉を飲み込んで、しばし沈黙して「え~~」と言葉さえ発しない呼吸、間合いで会場がどっと沸く・・・・実に巧みですな。

左手の親指に載せているのは、いわばパレットです。
もみじの葉を描いていきますが、無論、下書きがあるわけではありません。
漫画家は主人公をはじめとして登場人物を、何度かいてもそのキャラクター以外には見えないように、他ならないAやBの顔を繰り返し繰り返しススッと描いていきますが、同じことですよね。

仕事を積み重ねてきた人たちの技の魅力を感じます。

毎日毎日渾身の一作を作って精も根も尽き果てるという、そういう制作ではなくとも、問屋や他の職人が見て軽蔑されるようなものは作らない。そんな妥協のない感じでしょうか。

ルーティンの質というものを思うことがあります。
- 2017/05/06(土) 00:00:09|
- 工芸
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