以前、古今亭志ん朝 が話の枕で「最近は名人が多くて・・・」なんてぇことを言っていた記憶がああります。
名人、真打の粗製乱造を皮肉っていたわけですな。
しかし、この方は確かに現代の名人の一人なんでしょう。
実績がものを言っております。

元来が福島の方から来なすった方の様で、師匠と言えばそちらでついた方ばかりで終えて、こっちに来てからというものは、まあまず一人で独立独歩てぇわけでして。
大体京あたりの方は師匠についてそれを模して作るばかりでてめえというものがない。そこに行くとわたしなんざあ自分の工夫で世に認めていただけるようになってきたってぇ自負があります。・・・・と江戸落語の口調でお話されるわけではありません・・が。

こういう事でなければとても写真を撮らせていただけるような機会が得られる方ではないのでして・・・・・。

この世界で功成り名を遂げた方であることは間違いないのですが、何が素晴らしいかと言って「まだいろいろやってみるとその向こうにもっとこうしてやろうか、ああもしてみてやろうということが出てきていつまでも尽きんのですよ。」とおっしゃる。
翌日に娘さんにもお会いしたのですが・・・・娘さんは仕事を継いでおられるのですが・・・・父上は「入院した病院にまで仕事を持ち込んで彫っているくらい」お仕事がお好きらしいのです。

今仕事が楽しいというのは、とても高い水準に立ったればこそ見えている世界があって、今まで磨いてきた技でこそ挑戦できることに取り組める幸せだと思うのです。
それは誰彼なしに経験できる境地ではないのですよね。
この人の一挙手一投足が日本の今日の木彫の可能性の拡張なのですから。

だから休む間も惜しいのでしょう。

最初にデザインを描くときに、既に作業のイメージが浮かび、そのためにはこういう道具が必要になるなあと構想して、まず道具を作るんだそうです。
高度な絵描きさんもそうですね。絵の具を探求し、画材を探し、時には筆なども自ら作る。
写真では・・・・。
- 2017/04/29(土) 00:00:44|
- 工芸
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