制作しているのは永観堂に伝わる阿弥陀如来立像の後背です。
この寺は「聖衆来迎山無量寿院禅林」 というのだそうですが、その第7世住持である永観律師(ようかん)に因んで永観堂と言われているのだそうです。
その永観律師が行動(ぎょうどう)をしているときに寺の阿弥陀像が下りて来て律師を先導されたのだそうで、その際に律師が遅れるものだらか阿弥陀が律師を振り返ったそうな。その時からこの寺の阿弥陀立像は我々から向かって右側に顔を向けて背後を振り返ったままの姿になったのだとか・・・・。

その、世に「見返り阿弥陀」と呼ばれている像を摸刻します。
足元には阿弥陀立像の写真が置かれています。正面と横からの写真しかないのでなかなか再現が難しいとのことでした。

光背の素材をこうして高い位置に保って彫るのは『大変でしょ?!」と聞きますと、「作業台に置くとどうしても深く前かがみになってしまい、その方がつらいのです。」とのことでした。
こうして顔に近づけたほうが間近によく見えて作業しやすいのだとも・・・。

白木の部材を汚さないように手袋をしています。
光背には吉祥天が数体舞っていますが、その眼鼻の凹凸も細やかに表現しなくてはいけません。

手前に見えるのは課題で彫られる自分の手指だそうです。
(そういえば私も中学の頃の授業で、自分の手をモデルにして木彫をした記憶があります。軽く握ったこぶしを彫ったと記憶しています。絵をかいても彫刻をしても、もっともっととやればやるほど状態を悪くしてしまうという癖が私にはありました。)
ただし、この人の彫ったものではないそうで・・・・。
いろいろな課題を経てようやく仏像を彫ります。

道具の彫刻刀もそれぞれ自分で工夫して独特の刃の角度をつけたりアールをつけたりします。
握りの部分は勿論です。
職人にとって大事なのは道具です。
難しい課題になればなるほど「もっとこういう道具がほしい。」と自分で作り出すのです。
「どんどん道具が増えます。」

先輩や先生に教えてもらったり、横で見ていて「ああいうの、いいなあ。」と、真似て作ることもあるんだそうです。
- 2017/01/26(木) 00:00:34|
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