お客さんが数人周りを囲みました。
よく見るとその中の方が持参したもの取り出して色々アドバイスを受けているようです。
こういう実演の会場ではごくまれに職人同士でいくらかのやり取りをする中で「へぇ~ そこはそういう風にしてるんだ?!」などという言葉が漏れたりもします。
けれどこんな具体的に「角度をこう変えてこちらから鉋を入れれば、この面がこういう風に・・・・。」などという場面は見たことがありませんでした。

教えを受けている方は遠く他県から来ておられるようでした。

「まあ聞いて来ればできるかぎりね・・・・。」
「ところで葬式の時に使う写真を撮てくれないか?」と本気半分冗談半分。
私は「遺影」には笑顔の写真がいい、だからいくらかお元気な時に家族や友人と談笑したり趣味に打ち込んでいるようなとき、こうした職人さんならお仕事をしているときに写真を撮っておくのがよいと思っています。
普段苦虫を噛み潰したような表情の方でも、やはり遺影は笑顔がいいと思います。
「いいですよ。改めて撮りましょうか?」とこちらも本気半分、冗談半分。
後日写真をお届けした時に随分喜んでくださって、この中から選ぼうかなどと大きな笑顔で冗談とも本気ともつかないことをおっしゃっていました。
この方はご自身の人生に正直に向かい合っているとともに、とてもとても家族思いなのだと思いました。確かにその通りでした。

写真には力がある、と私は思っています。
「笑顔の遺影」もその一つです。
ですが、この方がその写真を実際に役立てるのは、ずいぶん先のことになるだろうなあと仕事に対する強い意欲を感じて思いました。
「住んでいるところはそんなに遠くないもないじゃないか。ぜひ立ち寄りなさい。」
「お邪魔したら工房で撮らせてもらうことになりますよ。それでもいいですか?」
「近いうちにビデオ撮りにくるし、少し前には放送局が取材にきて、放送もされた。まあ好きに撮ってみたら?!」とお許しがでた。
- 2016/11/13(日) 00:00:55|
- 伝統工芸
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