美術出版をされていた時に企画発・発行された書物を見せていただきました。
こうした専門書は書画や陶器などの実物を様々なルートで集めたり、専門的な写真家に撮影を依頼したり、確実な鑑定の裏付けを取ったりと大変なご苦労があると思います。
そのうえ印刷も特殊で、色数が多かったりします。紙にもお金がかかります。そのうえ大衆小説のように何万何十万冊と売れるようなベストセラーになるわけではありません。
残念なことに市場は大して大きくはないのです。
それで、単価も高くなりがちです。
発行し、採算をとり、出版社としての経営を成り立たせていくこと自体が難しいことだと思います。

それでもよい絵などの作品を広く多くの人の手に渡るようにしていきたいという願い、後世に残したいという強い願いに突き動かされてこられたのだと思います。
江戸期などの大衆的な印刷物にも素晴らしい意匠やウイットが溢れています。かつて日本はこんなに自由で闊達な精神があったのだということを、こうした書物を通じて知ることができます。
そういうものに注目されています。

実は私には80歳を少し超えた従弟が郷里に健在です。この方とほぼ同じ年恰好になります。
ふと思いたって電話しました。
今でも社会に対する自己犠牲的な活動を献身的に続けています。
その話を実に生き生きと、いささかも驕ることなく話します。
幼い時に戦争を体験し、戦後の厳しい社会状況を潜り抜けて、その中で自己の信念を形成し・実現してきた世代の「骨がらみの思い」を感じます。

私に欠けるのはその「骨がらみの思い」です。

亡くなった父たちにも感じたものです。
もっともっとこうした方々に出会いたいものと思っています。
- 2016/11/07(月) 00:00:09|
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