私がほんの少しの間瀋陽にいた時に公園で横笛と揚琴を演奏している方たちに出会い、その演奏の高度なことに驚かされたことがありました。
その時に私が「写真を撮らせて下さい。」というと ・・・・・私は私が「日本人」であることを伝えていましたので、その直後の一瞬の沈黙は私を緊張させましたが、・・・・・言葉ではなくて素晴らしい熱のこもった演奏で応えてくれたことを思い出します。
私が周囲を回って何度も何度もシャッターを切るとさらに汗を浮かべ体をゆすって演奏してくれました。
「謝謝」と礼を言って去ろうとすると「不客气 不客气」と。
そこが日本のかつての侵略地でありその中心都市瀋陽(奉天)であっただけに、満州開拓団員の息子である私にとっては感慨深いものがありました。
そういうことを思い出しながらこの人の演奏を聞きました。

最近まで施設で仕事をしていて高齢の方たちにこうして演奏した経験をお持ちですので、唱歌や李香蘭の曲などを吹いてくれました。
喉の奥を震わせたり唇を震わせて吹くなどの様々な奏法も見せてくれました。

その演奏の様子を見ていて「演奏の様子」を撮るより、肖像を撮りたいと思い立ち「クローズアップ」してみました。
もう少し手前の手指を残すべきだったなあと後で思いました。

この人のまなざしの向こうにはモンゴルの大草原とそこに吹く風があるように見えました。
大きな自然の中では人間が日々気にし思い煩っていることや、衝突や争いのつまらないことを感じるのだとおっしゃっていました。
こんなに深い思いを刻んだお顔に接すると改めて自分が反省されます。
- 2016/11/02(水) 00:00:48|
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