京都文化博物館で「京の名工展」が開かれていました。
京都府内の伝統産業優秀技術者の作品や、若手職人(京もの認定工芸士)たちの作品が並べられていました。
私は型染め友禅の「型」を切る職人で、今春、叙勲された和田さんに会いに行きました。
ある意味ではずいぶん『偉く』なられてしまいましたが、私はそれ以前に、どれくらい凄いのかを知らずにお近づきになり、そのまま親しくしていただいているので、作品を見せていただくとともにご本人との楽しいお話をしに行くのです。
こういう会場に来ると「やっぱり京都だなあ。」とつくづく思います。以前も書きました通り「伝統工芸士」約4000人のうち約1000人が京都にいるのですから、やはりこの分野の充実ぶりは素晴らしいものです。

この日は在廊しているからおいでという日に伺ったのですが、受付辺りにも作品の近くにも和田さんの姿が見えません。
それで3周して、仕方がないから記名だけして帰ろうと思っていましたら、会場のすぐ前の小部屋で「絞り」の方と「蒔絵」の方が公開実演をされていました。
その「絞り」の職人さんは以前撮らせていただいた方でしたので、せめてご挨拶して帰ろうと思ってその部屋に入ると、なんと入り口わきの壁の陰で和田さんが公開実演と体験コーナーを引き受けておられました。
先ほど書いたように『偉く』なってしまった方ですのに『しんどくて面倒な』こういう実演を積極的に引き受けるところが、本当に和田さんらしいのです。

この方は蒔絵師です。
和田さんと、これまた日本全体を見渡しても並ぶ方はほんの数人いるかいないかという絞りの名工が同じ部屋で実演をされているのです。ここに(もともと京都に縁があり、『京もの認定工芸士』になっている関係で、はるばる三重から)招かれたこの人もまた名工の一人に違いありません。

スマートフォンのケースに漆で彩色していました。
細い筆は、合成繊維の筆だそうです。漆は濃くて重いですからこういうものも使うのだそうで、猫の和毛の筆も置いておられました。
ケースの板をこうして宙に浮かしたまま描くのも大変だと思いますが、あまりに繊細な線を神経を集中して描かれるので「見ている方の息が詰まりそうだ」と言いますと、「見てくれた方がそういう事をよくおっしゃいます。こちらはそうまでではないんですが。」

会場にも蒔絵の作品、例えば印籠などが出品されていましたが、心を揺さぶられるような見事なモノでした。
仏像や紐・房、あるいは灯篭、着物に焼き物、漉いた紙などなど・・・・一日見ていても飽きません。
先ほど触れた型切りの職人・和田さんの作品も・・・ご高齢であるにもかかわらず・・・毎回新たな面を見せているのには驚かされます。
これでは「もう年だから」などという言葉は当分聞くことはないでしょう。
本当に励まされます。

この蒔絵師の方は現在の伝統工芸大学校の前身校の出身だそうです。現役の学生たちも随分励まされることと思います。
私自身職についていた頃にはついぞ足を運ばなかったこうした場で、学ぶこと感じることがたくさんあります。ありがたいことです。
- 2016/10/31(月) 00:00:13|
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