「絣」に布を染めるためには縦糸を同じ場所で「ふせる」作業が必要です。
「ふせる」というのは、布の一部を「染まらないように」することを言います。そのためにここでは束ねた縦糸を紙で巻いて、その上から糸できつく縛ります。

束ねた糸は細い繊維の束であるわけですから、毛細管現象によっても水≒染料が沁みこみます。
それを沁みこませないように紙とそれをくくった糸とで「防染」するわけです。

いくら強く縛るとはいえ、糸にあまりに大きな力を加えて引けば切れてしまうでしょう。それに少々の力で絞めても水の分子を浸入させないほど糸の繊維間の隙間をなくすことはできない相談ではないかと
疑問に思ったのですが、
「こうして縛ったものを染屋では一旦水に浸して、それから染める」のだそうです。
つまり先に水を含ませて染料の浸入を防ぐというのです。そしてくくり糸の力で染料をきちんと止めることで「絣」の模様をくっきりと浮き出させることができるのだそうです。
「そこが技術だね。」

「絣」にも実に様々で複雑なデザインがあり、それを描き分ける括りの手わざがあるわけです。

長い長い縦糸をこうして何百か所も括るのですから大変地道な仕事です。
作業は単純なようですが、括るテンションのかけ方、括る位置など素人目にはわからない技術があるのだろうと思います。
「やってみるかい?」と言っていただきましたが、実は私は糸を結ぶのがとてもとても苦手で、「いえ、写真に専念します。」とご遠慮させていただきました。

すでに80歳をいくつか越えられていて、もう仕事はあまり・・・・、とおっしゃいますので、「それではなおの事、撮らせていただかないと。」とお願いしたのです。

長年仕事を続けられてきて、高い技術を身のうちに築かれてきた先輩の姿に接すると、若い人たちを撮るときとは違う気の引き締まり方を感じます。
そして一向にうまくならないままの撮り方で申し訳ないなあ、とも。

- 2016/10/27(木) 00:00:22|
- 伝統工芸
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