この方は実は下絵から描かれます。
友禅もまた多種の分業によって構成されています。
意匠の考案、青花の色素による下絵、それに沿って糸目糊置き(防染ですね)、色挿し(先日紹介した「色」を入れていく作業です)、伏し糊(染めない部分を糊で保護=防染します)、地染、蒸し(染めた染料を定着させます)、水元(これがいわゆる友禅流しとして知られていた過程ですね。置いた糊を流しとります。)、この後刺繍や金彩が行われるわけです。
そしてこれらをプロデュースする「悉皆屋」がありました。

今はこうした分業のそこここにボトルネックができ始めています。
で、この方は地染や蒸し以外の仕事を一人でこなしてしまうのです。

この時も、意匠考案=下絵を見せていただきました。
子供たちが川の岸辺で遊んでいる風景です。

職人の仕事をより多くの人に理解してほしいという強いお気持ちの持ち主ですから、懇切に説明してくれる一方、「ぜひ撮って人に職人の仕事を伝えてくれ」とおっしゃいます。
金彩や色挿しなどは見て華やかですが、実はこの写真のような仕事は地味で、しかしとても繊細で難しい仕事なのです。
生地にフィルムを張り、染める部分を絵柄に沿ってカットするのです。
この方ーは鋭利ですのでわずかな力の入れ具合で生地の繊維まで傷をつけてしまいます。しかし、それを恐れていてはフィルムを切れません。
最初に葉を落とす瞬間が肝心で、その後は力を入れずに引くのがコツなんだとおっしゃいます。

この「力を入れない」は文字通り力を入れないのではなくて、軽くしかし適度な力を入れているのです。そこの呼吸を「力を入れず」と表現するのですね。スポーツの世界でもよくこういうことがあります。
他のことは教えられても、この感覚は教えられないね。自分で経験して掴むしかない、と。
「カッターの重さが重要なポイントだね。それで自分で工夫して重さを調整しているんだ」と言います。
やはり職人は道具ですね。

箔を張ったり金粉をふったりするのは・…見かけは派手やかで、難しいでしょ?と言われるけれど・・・大したことはない、誰でもできるよ。やってみる?! でも、このフィルムのカットはね、できないんだよ。そこを分かってほしいんだね。
- 2016/10/09(日) 00:00:43|
- 伝統工芸
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