木の枝の表面をプライヤーのようなものでむしり取っています。
何だか乱暴な手入れだなあと思いながら事情を伺いに近づきました。
「この木は『君が代蘭』というのだけれど葉は厚く尖っていて素手で触ろうものなら手を切るんだよ。」とのことでした。
「たぶん樹齢は50年くらいかなあ。 長い間手入れがされていなくて樹下は全く日が射さないし邪も通らないくらいに繁りに繁ってしまっていたんだよ。」

「それで幹も枝も痛むし、古い葉が整理されていないから枯れたまま枝にびっしりと着いたままで・・・・。」
あまりに葉が込み合ってしまって到底今のように中に入れないばかりか手を入れようにもその隙間さえなかったそうです。

この辺りにはかつては何本か植えられていたようですが「今ではこの一本だけが残っていて・・・・。で。。あまりひどいから仕事の合間を縫って手入れを始めたんだけど・・・。」
2、3日もあれば何とかと思ってたのにあまりに重傷で「一週間たっても終わらない。」のだそうです。

鋭い葉が生い茂った中には随分いろいろなものが投げ入れられていたようです。
「盗られた鞄じゃないかと思うものもあって警察に通報したところだよ。ゴミもひどかったし・・・・。
確かにここでは禁じられているゴルフボールもまだ3個、不思議なことに小さな電球、百円ライターが数本・・・・・。
きれいにしたはずでもまだ残っていました。取り出した時にはどんなに無残な状態だたんでしょうねぇ。

今ではすっかり刈り込まれて光はさすし、風も通って木も清々していることだろうと思います。
この方が「放っておけないなあ。」思ってくれなかったら、この夏も苦しい鬱陶しい不快な毎日だったでしょう。
あまりに生い茂り葉も枝も重なっていましたから、木の枝によって覆われた直径4メートルほどの円の中には、ご覧のように、ほとんど草が生えていませんでした。
木の枝も折れたり曲がったりこれまでの長い間の苦痛を訴えているようでした。

庭職人としては、まさに放っておけない、やむに已まれない気持ちだったのでしょう。
この木は根によって増えるようです。既にいくつもの芽が地上に顔を出していました。
挿し木もできるそうです。
スズランの花を数倍大きくしたような白い釣り鐘型の花が房のように幾つも咲くのだそうです。

この辺りを通る楽しみが一つ増えました。

思わず「君 良かったねえ。」と声をかけてしまいました。
- 2016/06/30(木) 00:00:24|
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