「伝統的な絵画とは違うものを学びたかった。」
この方は、屈 伸 というお名前で、中国西安出身の画家です。陝西省の省都ですね。

この会場には人物を写真で撮り、そのデータを基盤にしてパソコンで描きなおした作品が展示されています。
漢族の人物が約6割、それは昨年度の作品。残りの約4割がチベット族の人々で、これらが今年度のものだそうです。
屈伸さんの横に見えるのが今度の写真展のポスターですが、チベット族の若者を描いたものを素材に制作されています。
中国には56の民族が共生しています。しかし、そこにはいろいろな問題があり軋轢もあります。
そうした中で少数民族にまなざしを向けて作品を制作するという姿勢が注目されます。
彼自身は、漢族だそうです。

京都の芸術系大学に留学に来ていて、修了し次第中国に戻ると言っていました。
中国や韓国からの留学生のかなり多くは、自身の民族的、あるいは国民的な課題を強く意識して学んでいるように思います。
(むろん個人的利害、立身出世、成功を何よりも重んじて学び、未来を選択している者も少なくはありません。)
この人もそうです。

そしてそれは偏狭な愛国心や独善的国家主義的発想ではありません。
なるほど、自分の成功と社会の発展・成長を結び付けて考えられる途上国的特質もあります。

日本を先行して成長している国、社会として敬意や憧れをもって見、自国の課題を深くとらえてもいます。
その一方、先進国の病についても、また冷静な目を持っています。
私は写真を撮っている経験から、気づくことを率直に指摘しましたが、彼も自分の意図や工夫について熱心に話してくれて、お互いによく理解しあえたように思います。
彼の狙いもとても意識的で明確でしたから、私も学ぶことが多かったです。

青年たちの姿から未来の東アジアを想像することは愉快な夢の一つです。
- 2016/06/24(金) 00:00:39|
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