堀川今出川に「西陣織会館」があります。
この辺りから西北域辺りを「西陣」と言っていますが、ご存じの西陣織・友禅染が行われている地域です。
ここでは西陣織・友禅染などの様々な伝統的な工芸品が販売されているほか和服のショー(アンソロジー)が行われています。
私にとってはここで西陣織・友禅染めの一流の職人さんたちが、実演をしていることが最大の魅力です。
(無論、ショーでのモデルさんたちの華麗さ美しさが魅力的でないはずはありませんが。)
西陣には相互に支えあい補完しあう様々な仕事があります。それが地域の中で分業して結びあい、ついには見事な西陣織・友禅染の和服ができます。そういう仕事のコーディネートをしていたのが問屋さんでしたが、今ではそれぞれの技術を担う方が数人しかいないとかご高齢であと何年続けられるかという状況になっています。後継者問題は西陣織・友禅染などの伝統産業沈滞の一つの深刻な表れです。
さて、この方はこの道(型織彫刻)50年のベテランで「京の名工」の一人、伝統工芸士の和田さんです。

和田さんの背後には見事な着物地がかかっていますが、こうした着物に染め付けをする際の型を切るのがこの方のお仕事です。
複雑で多くの色がつかわれるだけにたくさんの型を切らねばなりません。

この型を切る技術の応用として行燈の枠に張る紙を切ったりしていますが、それはそれは見事な技術です。
特殊な和紙を切るのですが、その裏打ちに使われていた紙を頂きました。そこにも当然切り口の素晴らしさが見られるわけですが
(⇔)

「奥さんの名前は?」と唐突に聞かれて、思わず「〇〇」と答えてしまいましたら、その字をさらさらと墨で下書きをして、今切ってくれているところです。

両方の手の指を使って切っているのが分かりますか。小刀の切っ先は細く鋭いのですが、まるで生き物のように滑らかにかつ鋭く、しかもよどみなく紙を切っていきます。ファインダーを覗いていても息がつまりそうな集中です。
名前の横には平安時代の公達の姿が切られています。

仕事の中でお会いしたのならば厳しい方だとお見受けしますが、なにしろ門外漢を相手のお話ですので、実に懐の深い印象でした。
職人たちの未来、西陣織・友禅などの伝統産業の将来について、真正面から可能性を模索されている若々しい大先輩でした。
- 2011/09/17(土) 00:06:17|
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