「孤独の作家」と書いてみたが、それは違うと思った。
この方には2年ほど前にお会いしたことがある。

マロニエというギャラリーで個展をされていた。木彫作品と言って良いのだろう。
その作品は心が漂泊しているという印象の孤独感を強く湛えたものだった。
叫びもつぶやきも飲み込んだような静かな造形は、何度も作品の前に足を止めさせた。

部屋の隅に立つ作品が、ことに印象的で、私はいろいろな角度から見直していた。
そこに川添さんが背後から、「何か感じていただけるものがありましたか?」と声をかけられ、しばしこの作品についての会話があったと思う。

私は自身が個展をして、率直な批評がほしいなあと感じてもいたし、個展をされる方への礼儀だとも思っていたので、思いついたことを素直に申し上げた。
すでにすぐれた作品をものしている方に門外漢があれこれ言うのは憚られる、それが一般の考えだろうと思うのだが、その門外漢に向けて発表されているのだから、そこに何がどう通じているのかお知りになりたいだろう・・・そう思う。

実はこうして撮影をさせていただいた時に、奥さんのあ話で初めて知ったのだが「個展のときには、ただでさえ多い酒量が一層増える。とても精神的な疲労が多い。あの時もいろいろな反応に対して随分深く抱え込み考え込んでいた。」のだそうだ。
そういう誠実な精神が作品にもよく表れている。
私がある作品を気に入って、「ただこれを載せている台はもっと細くて不安な線を描くものがいい。」と・・・・買えもしないのに、こんなことを言ってすみませんねと言いながら・・・・つぶやくと、「ぜひ作り直してみるから後日見てほしい。」と言われた。

その機会を得るか得られないかかという頃に発病されたらしい。
人の噂に、ただ事ならない病状を聞き、心配していた。
で、今回の作品展のおはがきを受け取り、まず真っ先に出かけたというわけだ。

マロニエでお会いした時は会場の暗さもあり、またギャラリーでの毎日で神経が疲れて尖っていたせいもあったのか、表情はこんなに柔らかくなかった。
今は懸命にリハビリに取り組み、奥さんの支えもあって、依然として不自由な体ではあるが、制作にも意欲をお見せになっている。
- 2016/04/12(火) 00:00:09|
- 彫刻
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