三方と書いて「さんぼう」
私は今まで「さんぽう」と読んでいた。そして会話の中でも「さんぽう」と聞こえていたのですが。
神仏や敬する人にものを差し上げる際や儀式のときにモノを載せる、あの台の事です。
神社などでよく見かけます。
素材は檜です。

なぜ「三方」というのですか?とギャラリーからの質問に
土台になる部分に両サイドと前方に刳り型が穿たれているからだというお答えでした。
モノを載せる盆のような部分は四角形=四方なわけですから不思議な名だなあと思っていたのですが、そういうわけだそうです。
今は刳った内側に水をぬって湿らせています。こうすると作業がしやすいんだそうです。

この刳型を何の下書きも、図形をなぞる「型」もなしに、フリーハンドで削っていきます。
それなのに何枚かを重ねると…「なんという事でしょう!!」 です。 ピッタリなんです。
驚いていると、他の場所で実演されていた他の分野の職人さんが「体が覚えているのさ。」と答えてくれました。
刳り抜いていく刀は毎日のように研ぎますから長さも幅もずっと減ってしまって、細くなっていますから折れてしまうのではないかとさえ見えます。
研いで研いでいくとやがて短くなりすぎますから、絵の部分を削って仕込まれている部分を出してまた研ぐのだそうです。
「そのためにかなりの長さが柄の中に仕込まれているのですよ。」という事でした。

私がよく行っている洋食屋のまじめな店主が、同じようにナイフを研いでまるで肥後守ほどの細さんにしてしまっていました。
ずいぶんたくさんの鉄分が料理と一緒にお客さんんもお腹に入ったねなんて冗談を言っていましたが、職人の仕事はこういう風に道具に現れるのですね。
「そのうちに刃の部分のいちばんいいところが尽きてくるので、使い慣れた道具が失われる辛さがあるんです。」

さほど厚くない檜ですが、「宝珠」の形を削っていくうちに刃先が鈍くなって来るのだそうです。
「ほら穴の削り方を見てごらん。」と先ほど解説してくれた職人さんが言います。
「魚屋が刺身を切るときは魚の身の中心に向けて直角に刃を入れないだろ?! 刺身包丁は引いて切るから長いんだ。この人の場合は外にスライドするように切り出しているね。」
その通りなんです。
こうしてできた板の三か所に毛筋ほどの厚みを残して三筋の切り込みを入れて、角として直角に曲げます。
この切込みもまた狂いなく入れなくてはきちんとした強度のある直角にはならないのです。

お父さんがこのお仕事の師匠だそうですが、「父は私の道具は怖いというのです。」
尖っていて細すぎると感じるからでしょうか。
「でも私の道具を使ってみて、『使い良い』っていうんですよ。」
刳った内側の縁の面にきれいに傾斜をつけています。
- 2016/03/26(土) 00:00:21|
- 伝統工芸
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