芸術系大学のカリキュラムの詳細を知らなかったので、こうして卒業制作展を見せてもらうといろいろ驚くことがあります。
日本画だとか油彩画だとか、あるいは彫刻や版画、陶芸などはそういうものを学ば鵜ところが芸術系大学だろうと容易にイメージを持つことができるのですが。

この人の卒業制作は・・・・竹細工なんです・・・・・が。
そして展示会場では、まさに竹細工の実演をされています。

「大学に入るときには、まさか自分が卒業時にこんなふうに竹細工をしているなんて想像もしませんでした。」
「君を送り出した高校の先生も驚くだろうねぇ。」
この人の作品は・・・・・この虫かごなんです!!
この六つ目網の籠が4年間の成果?! 六つ目編みって竹細工の基本じゃないの?
しかし、この籠は実はただモノじゃないんですね。
歴史上失われて幻となった虫かごを文献や現代の竹細工職人の技を参考に復活再現したモノなんです。
文献に記されていることを文字の上で想像してみても、実際に制作してみなければその実態は分からないわけなんです。
歴史学の中に実物を、そのモノや動作や環境を再現することで実証的に裏付ける分野があります。
例えば縄文式土器は路地に薪を積んで焼くのですが、それによってどれくらい火力が得られて、それによって焼かれた土器の色や硬さを再現しなければ、野焼きかどうかを確証できないわけです。
黒曜石の刃物が果たして実用に耐えるものかどうかもまた実物を再現して実証しなければなりません。
文献や伝承にあるものを実物として復元するというのは重要な科学です。
彼女の研究は歴史的な工芸作品の復元実証にあるのでした。

上賀茂神社の近辺に社家というものがあり、そこに上賀茂別雷神に仕える神官が住んでいました。
その上賀茂神社が天皇などにマツムシや鈴虫を入れた籠を作って献上するという習慣があったのだそうです。
それが薩長の武士たちによって天皇が多くの公家たちとともに関東に連れていかれてしまたので、そういうことが廃れて、そもそもどういうものが献上されたのかもわからなくなってしまっていた、というわけなんです。

「社家」にその記録があたことと、すっかり壊れてしまった籠の一部が見つかったことから、再現してみようと思ったのだそうです。
- 2016/03/11(金) 00:00:01|
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