「大庭さんには見てもらえなくて、・・・。」
「うん、見たかったけど、僕もたまたま東京で・・・・。」

「そうでしたよね。で、私はイタリアでどちらにも行かれず・・・母には日帰りのような帰国はぜいたく過ぎる・・・といわれながら、結局、三泊四日の強行軍で・・・・。父の帰ってきなさいコールに負ける形で・・・・。
でもよかったと思います。やはり自分の作品を多くの方々に公表してみてもらう以上はその場に立ち会うべきだと強く思いました。お客様に対する義務でもあると・・・。」
「そう、作家の特権でもあるしね。」

「で、写真をやっていく自信のほどはどうなんだい?」
「大庭さんは、どう思います? 私の写真。」
「僕は彼奴と同じで、こと君のことについてはあんまり客観的に評価できないからねぇ。
貴ちゃんはどうなの?! 貴ちゃんはそういうところ結構シビアに見ることができるし、僕なんかも結構痛いところをやんわり突かれてきているからねぇ。」
「母は、いつも大庭さんの意見を聞きなさいと、そればかりで・・・・。」

「君の両親は君のことを一番期待しているし、買っていることは間違いがないね。」
「それはよくわかっているんです。でもそれと客観的な評価とは同じでもないでしょ?! そういうことは私もわかっているつもりです。 両親が社会的なことや色々な芸術分野の作品に対して高い評価の力を持っていることは私も認めます。だから率直に言ってくれればうれしいんですけど、身内の評価は…って、あまり口に出さないんです。
父も、大庭さんに聞けって・・・・。」
「それは実の親として責任放棄だなあ。怪しからんやつらだ。
今度飲みに行ったら大いに文句を言ってやる。 自分の娘を育てるのに重大な岐路の選択のアドバイスを人任せにするとはってね。」

「大庭さんはイタリアにはいつ戻られるんですか?」
「僕は、京都にあと一週間いて、そのあと11月いっぱいは東京さ。 それでバンコックに立ち寄って12月半ばにイタリアに戻ることになるかな。」
「それで、両親とも何だかうきうきと相談していたんですね。 大庭さんがうちに来られるんですね。」
「なんだ、二人ともその話を君にしていなかったのかい?
君が僕にメールをくれたのは、そのことを知っていての事かと思っていたんだけど・・・。」

「そうじゃないんです。
私が日本にいたころは母と私の距離が近くて、父はちょっと疎外感を感じていたらしいんです。よく自分だけ『はみご』になっているって、ぼやいていました。
でも、私がイタリアにいってからは先のとがった二等辺三角形になったというか・・・・。底辺の2角がずっと近づいて。
それで、いつも何か二人で面白いことを企んでいるというか。」
「なるほど、それで今度は君が蚊帳の外だったっていうわけ・・・?
まあ、それが夫婦って言いうもんじゃないかな。
僕にはわからん世界だけどね。
君も安心して巣立てるってものさ。」
- 2015/11/08(日) 00:00:20|
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