私はこの地に引っ越してきてまだ5年あまり。
引っ越してきて間もなくのころにご近所を散歩していて「おやっ?!」と注目した物があります。
それが誂え紳士服のお店です。
今や誂え紳士服の店など、まして工場に発注するのでなく、お店で縫製している店など滅多にみることはできません。 私の郷里の街ならいったい何軒が営業できているでしょうか。おそらく片手の指の数がほとんど余るのではないでしょうか。

既製服に押されて、かなり高額所得のある人でもスーツを誂える人はたくさんはいないと思います。
外国ブランドのスーツをデパートでは20数万円で販売しています。それだけ出せば服を誂えることができても、多くの人は職人の仕立ての技よりもブランドやみかけのデザインを採ります。

そういう流れがすっかり定着してしまっている今なお店を続けていられるのは、よほどの腕をお持ちか・・・・・。
しかも、この辺りは住宅街です。ふらっとお店に入る人はまずないでしょう。

この方は御年82歳だそうです。 現役です。

私の亡くなった父は洋服の仕立て職人でした。
その父は30年ほど前には洋服屋を廃業してしまいました。 事情はいろいろありましたが、要するに仕事がなくなったのです。
私の高校時代の学生服は父の仕立てでしたから、純毛の生地をウエストを絞った裁断で縫ったもので、裏地は黒の絹地でした。
父親の職業欄に「洋服仕立て業」と書くのが息子には・・・・父の意には反していましたし、それは経済的な困難を意味していましたが・・・・何となく誇りでした。

仕事に対する父の職人としての誠実さが私には誇りだったと思います。
そんなことがあるものですから、このお店の前を散歩で通るたびに、ずっとご主人とお話をしたくてなりませんでした。

既製服の裁断も随分と改善されてきて様々な癖のある人にも見かけ上フィットしているようになりました。
私などは幸い既製服でもサイズも合い、着てもおかしくは見えないのですが、 しかし、根本は体を服に合わせているわけです。

人体は、実は左右対称でさえなく、私の体のようにいろいろにねじれたり歪んだりしているのですから、その体に沿わせながら、かつすっきりとスマートに見えるように体を包み、そのうえ方もひじもスムースに動かせるなど機能的でもなければなりません。
- 2015/07/04(土) 00:00:54|
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コメントありがとうございます。
私の父も街の小さな洋服屋・仕立てやさんでした。
こちらのお店は幾人もの職人さんを抱えておられたようです。
- 2015/07/05(日) 14:00:29 |
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- soujyu2 #-
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