「未来のマンガ家8人展『発芽』」
ギャラリー 高瀬川四季AIRで開催されていました。
大学の4回生の集まりです。
初日に行くとまだ2階の展示は完成していなくて、2階からあわただし動きが伝わってきます。
この辺が学生ですねぇ。
1階には一人作画実演をしていました。

彼らは現役の大学生ですが、すでに出版社に作品を持ち込んでいるようです。
早いデビューの人は現役時代から本のページを飾る人がいる世界ですから当然といえば当然なんでしょう。

が、そこに大きな落とし穴があるようにいつも感じています。
私たちの世代では永嶋慎二という漫画家を知る人は少なくないと思います。
あるいはバロン吉本という作家が好きだったという人もいるでしょう。
彼らの作品にも美男美女が登場します。が、脇役の人物の多彩なこと。現実の人間観察がとても豊かに、ヒューマンにされていることを感じました。
人物を観察すると言うことは単に人を見てスケッチを繰り返すということではありません。
人の置かれた社会の様子を観察するということが背景になければその人に対する共感性や怒り、憎しみは出てきません。それが形象されなければ足らないと思います。

そういうことをするだけの時間を許されないで早世を要求される世界のように思います。

日常的心理はとても良く描かれていると思います。コミックスとしての絵の水準は高いんだと思います。
しかし、問題は世界観です。
ここで出会った青年たちはとても、話しぶりも朗らかで礼儀も正しいし好青年たちです。
絵にもエロやグロ、あるいは破壊・暴力の賛美と言った作品は見られません。
線も落ち着きがあります。 そういう意味ではとても好感を持ちました。

あまりに競争の激しい買い手市場です。
しかし、ここに多くの人が踏み分けてきた道があって、一つの表現ジャンルとして相当に力のある世界を作ってきています。
コミックを原作としてTVドラマが作られたりするということは、良かれ悪しかれ、その力の一面を示していると思います。
私たちはいわゆる漫画世代ですから、漫画≒くだらないとは思いませんが、私自身は漫画界が危ない線を渡っているなあとは感じます。
戦争や国家についての思考が貧弱で直感的に過ぎるように感じています。
と言っても私には発言の資格はなくて、とうの昔に漫画家から離れてしまっています。

新し世代が新しい世代の自分の問題としてこの漫画という表現ジャンルを担い発展させていくことでしょう。
それでよいと思っています。またそうしかできないとも。 彼らに期待するしかないのです。
そして、その期待ができそうな空気を彼らから感じました。
この後、撮影の約束がありましたから、ゆっくりと話せなかったのが残念でした。
- 2015/05/05(火) 00:00:20|
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