(本文と写真には何の関係もありません。文中に登場する人物および人間関係、組織・団体名は架空のものです。) ところで美大は楽しめたかい。
外国の美術館や芸術系教育機関と日本のを比較してみたいという気持ちもあったから、君がいるうちに大学に入り込みたっかたけれど、機会があまりなかったね。
君の留学もあったし。

あの留学でもロンドンを拠点にずいぶん大陸のほうを回ったって言ってたね。
美大にいたんだからイタリアかフランスか、それともアメリカかと思いきやロンドンだから驚いた。やっぱり法学に未練があるのかと。英米法と大陸系の法律の比較でも勉強しているんじゃないかと。そうじゃなかったんだね。
貴ちゃんの大学時代の友達がロンドンで教えてたんだよね。知ってる知ってる。会ったこともあるし。
それでイタリアに来るときに、なぜタイミングよく僕がいてくれないんだって・・・・。

貴ちゃんも盛んに「案内してあげて」なんて言ってきたけど、あのころはラテンアメリカのほうに目が向いていたからねぇ。
アメリカの裏庭から脱していく中南米諸国の様子は世界史的に大きな意味を持つのに、日本ではほとんど報道されない。
脱アメリカ現象だから日本のマスコミには視野の外なんだね。経済的つながりも細いし。
IMF的緊縮財政の押し付けと、新自由主義が見事に反撃を食らっていたからなおさらかな。
あのころからきっちりとこの経過を報道してれば今のギリシャ問題の扱いは、もっとずっと違っていたに違いないんだけどね。
借金してるほうが居直っちゃまずいでしょ見たいな軽薄な論評じゃとても世界史に耐えられないね。

僕は報道カメラマンじゃないから、違うアプローチをするけれど、日本のマスコミやジャーナリストはあまりにも勉強不足で鈍感だね。アメリカを通してしかものを考えられないからだろう。
いわゆる左翼勢力でも、しっかり中南米に目を向けているのは共産党ぐらいじゃないかな。沖縄辺野古基地問題でも同じだ。
日本の知性そのものが全体として劣化が激しすぎるように思うね。

外国に出たら日本人の意識や政治のスタンスがいかに国際的感覚のないものかよ~くわかると思うよ。
それは芸術の世界、もちろん写真もだけど、主体性に乏しく、普遍性にも欠けると言うことがいやと言うほど分かる。
そういう目で自分を振り返るから、時々、暗たんたる思いになるね。
だから、君がしばらく海外で勉強したいというのは大賛成だね。ただ、それがイタリアだと・・・・。
いや、迷惑ってわけじゃないよ。 そうじゃないが。 ・・・・・。

まあ、もうイタリアに行くということは決まってるんだし、これからいくらでも話す機会があるんだから、この話はこれくらいにして、そろそろ出かける準備をしようか。
あっ! そうだそうだ。 あいつが家に残せる写真を撮っておいてくれと言ってたから・・・・。
ほらその窓に掛けて・・・。

そういう本を外国にもっていって、時に引っ張り出して読んでみると、予想外の感慨があったりするよ。
生まれ育った国の文化は良くも悪くも、僕らにはもうしみついているからね。
それが海外にいると時に実にくっきりして、自分の姿がはっきりと掴めたりするものさ。それは悪くないと思うね。

特殊性だと思っていたものが、世界に普遍的にあるものだと確認できることもあるし、その逆もね。その時にそういう文献があると曖昧な感想でなく、つかむことができる。
それ、あげるよ。
- 2015/03/14(土) 00:00:03|
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