(本文と写真には何の関係もありません。文中に登場する人物および人間関係、組織・団体名は架空のものです。) ところであの先生、そう君の担任の。
あの先生、写真部の顧問だったんだね。 僕が学校にいった時には綾ちゃんの担任だって君も言うし本人もそう自己紹介するから・・・。
はっきり覚えてないけどどこか工業系の大学を出て数学を教えているといってたかな。 そう機械工学だった?!
僕が彼をえらいなと思ったのは、光学的な理屈やカメラのメカニズムはある程度分からなくはないけど、それを教えても「写真を撮る」ということの最も大切な点ではまったく無知な自分は口を挟まないことにしてる」といってたことだね。で、お世話をする顧問に徹してるって言ってた。
それであの時、合評会を始めてしまったときにあの子たちはお互い率直に批評しあえたんだね。そういうことを彼が指導してきたらしい。
学校の美術の時間も社会や理科の時間も「良い写真を撮る」という意識を持てばきっとこれまでと違ってくるよと教えていたらしいね。そのことも、当たり前といえば当たり前だけど、学校や勉強ってそういう風に教えられることはまれだからね。感心したよ。
君もあの先生は好きな先生の一人だって言ってたけど、まあそうだろうね。
君は写真部じゃなかったのに・・・・、法学部志望から一転写真志望になってしまったというわけ? あれがきっかけで?!
・・・・というだけでもなさそうか。

まあ、話を急ぐ必要はないから・・・・。
今晩、食事していけるんだろ? 卒業祝いもしなくちゃね。 何食べたい? おごるから好きなものを言ってみてよ。
大丈夫大丈夫。借家住まいだし家族もないけど、まあ多少の収入はあるからね。
僕の写真を買う日本の雑誌社などは大して多くはないけれど、ヨーロッパでは多少は知られるようになったし。飛行機代を払っても少しは残るようになったよ。
君があの時に言っていたきれいな街並みやきれいな人たちの写真で稼がせてもらってるからね。日本でも。

夕食時までちょっとくつろいでくれたらいいよ。
おじさん、ちょっと入稿を急かされている原稿を書き上げて、写真と一緒に送ってしまうから。

フランクフルトの友人が繋いでくれた仕事なんだけど・・・まだ約束の期限まで日にちがあるのに、ずいぶん心配性なやつで、とにかく自分が向こうの者との間で決して遅れたくないといってくるんだ。
進み具合の節々が計画通りじゃないと納得がいかないらしい。ほら僕なんかトータルとして期日に間に合えばいいって感じなんだけど、それがどうも彼には理解できないらしいんだね。
僕は結構きっちり契約は守ってるほうなんだがなあ。

いや、心配ないよ。
彼にはイタリア人との仕事の経験があるから。

世界にはいろいろな時間が流れているのさ。
時間だけじゃないさ。なにを尊いと思い、どんなことに命をかけるかなんて千差万別で、とても一日や二日で理解しあえるなんてことはないさ。 それぐらいに違っているから世界に出ていくことが面白いんだよ。世界中が皆アメリカ顔した金太郎飴になったら実につまらないじゃないか。
だからこのお互いに違っていることをいかに大切にしあい、お互いが精神的文化的に豊かになれるかって方向で付き合っていかなくちゃ。 世界の発展性だって危機を乗り越える力だってやせ細っちゃう。
近隣の国の悪口を世界中から集めて、自分の国への褒め言葉も目を皿にしてかき集めて悦に入っているような国も国民もこれから尊敬もされなければ居所も無くなるね。
第一、謙譲が美徳だという国柄が素晴らしいと自画自賛しながら、どこかのだれが書いたかわからないような自国へのほめ言葉をかき集めては針小棒大に広げて満足してるんだから何をかいわんやということだね。

おっと、間違えた。
で、君はもう写真学校は決めてるの? あ! ミラノの・・・・だね。
ということは何かい。 僕は時々ミラノに回って保護者役を務めなくちゃならんわけだ。
そしてそのたびに君をモデルに写真が撮れる・・・。
ミラノだったらジェノバやトリノは勿論、ヴェネチア、ボローニャ、フィレンツェだって、そう遠くないからいろいろ勉強にはなるよ。
慣れたら南イタリアや東欧の人々の暮らしもよく見るといいと思うよ。ただし、一人ではね・・。
もう楽しいイメージでいっぱいというところかな。
じゃあ今夜はイタ飯といこうか?!

えっ?! ワインもいいかって? おじさんが君にワインを勧めなかったことがあるかい?!
君が中学生の頃にワインを勧めて、あいつにずいぶん叱られたこと覚えてない?
お前が家に来るのは家族一同大歓迎なんだが、綾にワインを勧めるのはやめてくれって・・・。それにあんまり昔の話はするなって・・・・隠し事の多い男だからなあいつは。
失敗したことを話されるのがどうも好かんらしい。あれだけ結果を出しても、どうもそうらしいねぇ。
その後も相変わらず「綾ちゃん、ワインはどう?」てやったから、いつごろだったかなあ、少しだけなら仕方ないということになったのは・・・。
ワインはレディーの嗜みだっていったら、貴ちゃんも応援してくれてさ。
あいつは自分が多くは飲めないからやっかんでいるんだよ。きっと。
- 2015/03/13(金) 00:01:37|
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ちょっと遊んでみましたが、・・・。
この写真は、私にとってはちょっと階段を上がれたかなと感じているものです。
この写真たちについて絵作りという観点からある方から的確なアドバイスをいただきました。が、それとは別の階層での一歩前進です。まあ相当に主観的なものですが。
言葉のほうは、写真にとっては全く別世界なのですが、かといってからまないわけではないという趣向です。
あくまで趣向ですが。お一人でも『面白い』と言っていただけると嬉しいです。
確かに畳に腹這いになってファインダーを覗いているわけですが、楽しくて仕方がない・・という感じでした。
ただこれを俯瞰してみている人がいたら、どう感じたでしょうねぇ。ちょっと気恥ずかしい・・かな。
- 2015/03/14(土) 11:14:18 |
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- soujyu2 #-
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