こうして巻き取った糸を「どうぞ触ってみて・・。」と勧めていただいたので手に取ってみると、絹独特の「ギュッギュッ」というこすれあう音がします。
しかも軽い。
合成繊維の糸の束を手渡されましたが、光沢も違えば手触りも違う。生糸のほうが軽いし暖かいし艶やかだし。

もうこの仕事50年のベテランです。
景気の良い時代は、今となっては考えられないくらいの仕事があったのだそうですが、「今はまあ、絶滅寸前だね。」
「工賃は安いほうがいいと目先のもうけに狂奔した付けが来ているわけだね。今でも(業界の)根本の性根は変わっていないから、回復は望みがないねえ。」

ご自分にいろいろな改革の提案があるだけに、悔しそうです。

せっかく撮るんだったら器械も動かそうか?と言っていただいて、休憩に入るために止めた器械のスイッチを入れ直しててくれました。

巻き取った糸の束をくるりくりと捩じると美しい束になります。
それだけで床の間に置けそうです。
今度私はある場所をお借りしてちょとだけ艶っぽい写真を撮りたいなあと思っているんですが、そこに置いたら一層効果がありそうな気がします。

日本を取り戻そうと声高にいっている方たちがいますが、伝統工芸の実態を見ると
いったい日本の何を、どんな日本を取り戻そうというのか分かりませんね。
軍隊ばかり大きくしてどうするんでしょう。
庶民に生活を楽しむ家計の力と教養を伸ばすゆとりがなければ、こうした伝統工芸の世界が失われるのはもはや疑いのないところでしょう。
- 2015/01/16(金) 00:00:39|
- 伝統工芸
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