岡崎公園から鴨川に向かって疎水が流れている。その疎水にそって遊歩道が整備されていて、桜並木が続いている。
道路と疎水に挟まれたその遊歩道の桜の枝の下で銅心さんは毎日のように座って銅線を編んでいる。
銅線を使ってかごを編んでいるのだ。
真夏であれ真冬であれ雨風がなければたいていそこに座っている。
秋もこれくらい深まってくると地面はもう冷たい。シートを敷いているとはいえ腰は冷えるだろうと思う。
私がこの方を最初に見かけたのは、ここではない。 堀川の川端でこうして道具を並べ、編んだ小さなかごたちをおいていた。
その堀川端の前には出町柳の三角公園にいたという。

この仕事はもう長い。
会社勤めのころもあったけれど、たまたま銅線で編んだかごを周囲の人が評価してくれて、「思わぬ価格で買い取ってくれた。」ことがきっかけで、やがていろいろあって、こういう生活になったのだそうだ。

「銅(あか)がね」自体が安価なモノではないから初めは切れ端をつないで編んでいたのだそうだ。
こうして長い番線を材料とできること自体、銅心さんの作品を買い求めている人が確実にいることを示している。

一つを作るのに何メートルの銅線が必要なのかわかりませんが、「毎日2個は作るように自分に課してきた。もし今日一つしか作らなければ翌日には夜遅くなっても必ず3個作るというように・・・・。」という。
生涯に3万個にはとどかないかなあ・・・とちょっと未来に思いをやりながらつぶやく。
10年毎日休みなく2個ずつでも7300個ですから、大変なことです。

私は以前にもこの人を撮らせていただいたことがある。その写真の内の1枚を他の何枚かの写真とともに小さなファイルに入れて持って歩いているけれど、そのファイルを見ていただいた多くの方が、この銅心さんの写真に目に止めて「これがいい。」とおっしゃる。
若い女性は10人中7、8人がそういう反応をする。不思議なくらいだ。

「ワシは男前じゃないけどいい顔はしてるだろ?」とお茶目な顔で言う。
ここには少なくない、心に傷を負った、あるいは疲れ果てた女性たちが来る。中には小さな座布団を持っ来て長い時間座り込んで話している人もいる。
「話は聞くよ。花氏に来るのはワシが安心だからじゃないか?」と。

少なくない苦労をなめてきた方だから心が折れかかっている人の身持ちがよくわかるのだろうか。
- 2014/11/08(土) 00:02:16|
- 工芸
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0